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エルガー《威風堂々》第1番 解説|式典で演奏され続ける理由と聴きどころ

エルガー《威風堂々》第1番は、
世界中の式典で演奏され続ける「誇り」と「気品」の行進曲です。

入学式や卒業式でおなじみのこの曲は、
実は最初から式典用として書かれた作品ではありません

1901年、通常のコンサート曲として初演された《威風堂々》は、
史上初の2回アンコールを受け、
その後、イギリス国王の戴冠式音楽へと発展していきました。

 
筆者
もともとは管弦楽のみの曲で、
現在有名な歌詞も、後から付けられたのです!

作曲者のエドワード・エルガーは、
長い下積み時代を経て40代で名声をつかんだ、
イギリスを代表する作曲家です。
《威風堂々》には、そんな彼の誇り・理想・人生観が色濃く刻まれています。

この記事では、
「エルガー 威風堂々」はどのように生まれ、
なぜ今も世界中で演奏され続けているのか
を、
作曲背景・聴きどころ・演奏者目線から分かりやすく解説します。

 
筆者
威風堂々は、私が人生で初めてオーケストラで演奏した曲でもあります!
演奏する立場から見た魅力もお伝えします。
  • 《威風堂々》が、どのように生まれ、式典音楽になったのか
  • 「希望と栄光の国」と呼ばれる中間部が、世界中で愛される理由
  • 《威風堂々》の聴きどころと演奏のポイント

威風堂々はどのように作られた?

コンサート用の曲として生まれ、初演で大成功を収めた

《威風堂々》は、式典のためではなく、演奏会用の管弦楽曲として作られました。

1901年、作曲者のエドワード・エルガーは、
皆を打ちのめすような旋律を思いついたんだ」と言いながら、この曲の有名な中間部(トリオ)を作りました。

彼はこのトリオを軸に、純粋な管弦楽曲として《威風堂々》を書き上げました。

そして1901年に、ロンドンの「プロムナード・コンサート」という有名な定期演奏会で初演されたのです。
すると聴衆は熱狂し、史上初となる2度のアンコールを要求しました。

この異例の成功によって、《威風堂々》は国内で一気に注目を集める存在となります。

 
筆者
つまり《威風堂々》は、
まず「演奏会で評価された音楽」として世に出た作品なのです!

国王の提案によって式典音楽へと発展し、世界に広まった

演奏会での成功の後、エルガーは
イギリス国王の戴冠式のための音楽、「戴冠式頌歌」の作曲を依頼されます。

その作曲過程で、国王エドワード7世が、
「威風堂々のトリオに歌詞をつけてみてはどうか?」と提案しました。

 
筆者
実はエドワード7世本人も、この曲が大好きだったのです!

エルガーはこの案を受け入れ、
トリオに歌詞を付け、戴冠式頌歌の終曲として転用します。

戴冠式は注目の中で終了し、
この頌歌の終曲は、「希望と栄光の国(Land of Hope and Glory)」として知られるようになりました。

この終曲は各地でとても受けがよく、これに目を付けた出版社が独立した歌曲としても出版。
イギリス国内だけでなく世界中へと広まっていきました。

こうして《威風堂々》は、
式典・祝賀・行進を象徴する音楽として定着していったのです。

エルガーはどんな人だった?

独学で音楽を身につけ、イギリス的な響きを築いた作曲家

エドワード・エルガーは、
イギリス中部ウースター出身の作曲家です。

1857年生まれという点からも分かる通り、
彼は後期ロマン派~近代音楽への過渡期の作曲家です。

 
筆者
バッハやモーツァルトよりはるかに後に活躍した作曲家です!

意外なことに、エルガーは
父は楽器店を営み、バイオリンやオルガンを弾く音楽家でしたが、音楽院で体系的な教育を受けていません。
作曲や和声を正式に学ぶ機会はなく、
楽器店・教会・町の音楽文化の中で、独学で音楽を吸収していきました。

この背景が、
ドイツやフランスとは異なる、
どこか内省的で、色彩感に富んだ「イギリスらしい響き」
エルガーの音楽に与えています。

長い下積みを経て、40代で評価を確立した遅咲きの作曲家

 

エルガーは若い頃から作曲家として順風満帆だったわけではありません。

16歳以降は父の仕事を手伝いながら、
バイオリンの演奏や指導、指揮などで生計を立てていました。

20代後半から本格的に作曲へ力を注ぎますが、
30代後半までは作品がなかなか評価されず、
経済的にも厳しい時代が続きます。

 
筆者
この頃には「愛の挨拶」「弦楽セレナード」などの有名作も書いていますが、
当時は大きく評価はされませんでした…!

転機となったのが、1899年の《エニグマ変奏曲》です。
友人たちの性格を音楽で描いた作品が大ヒットし、
エルガーは40代にして一気に世界的作曲家の仲間入りを果たします。

《威風堂々》は、
こうした長い苦労と遅咲きの成功を経た後に生まれた作品です。

だからこそ、この行進曲には
単なる勇ましさだけでなく、彼の様々な経験から来る
誇り・達観・気品といった深い感情が宿っているのです。

エルガー《威風堂々》第1番の聴きどころ

この曲の正式なタイトルは “Pomp and Circumstance” ——
“pomp” は「壮麗、華麗」、”circumstance” は「儀式張った、物々しい」という意味合いです。

 
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日本語の「威風堂々」は、実はかなり意訳…!
この曲の雰囲気から名付けられたかと思われます!

行進曲部分と、有名なトリオの2つから構成されています。

主部—勇ましさだけで終わらない、気品ある行進曲

 

《威風堂々》は、いかにも行進曲らしい力強さで始まります。

 
筆者
リズムははっきりしていて、
「前へ進む」「堂々と歩く」イメージが自然と浮かびます!

ただし、この曲は
単に勇ましいだけの音楽ではありません。
明るく華やかな雰囲気の中に、
どこか落ち着きや奥深さが感じられるのも特徴です。

これは、作曲者であるエルガーが、
誇りや威厳を「派手さ」だけで表現しなかったからだといえます。
最初から最後まで聴くと、
堂々としていながら、品のある音楽だと気づきます。

トリオ―世界中で愛される、中間部の旋律

この曲で最も有名なのが、
途中で雰囲気ががらりと変わる中間部(トリオ)です。

メロディはゆったりと広がり、
どこか誇らしく、胸が熱くなるような響きがあります。

この旋律は後に
「希望と栄光の国(Land of Hope and Glory)」として
歌詞が付けられ、世界中に広まりました。

なお、原曲の《威風堂々》には歌はありません。
それでも、この中間部を聴けば、
歌が聴こえてくるように感じるほど、
はっきりとしたメロディを持っています。

 
筆者
初めて聴く人でも、
「ここがこの曲のいちばん大事なところだ」と自然に分かります!

バイオリン弾きの視点

《威風堂々》は、オーケストラ初心者でも取り組みやすい行進曲です。

リズムが明確でテンポも安定しており、「まずは堂々と弾く」ことに集中できます。

1stバイオリンは旋律を多く担当でき、あの有名な中間部を弾く喜びがあります。

一方、2ndは音域が安定しており、合奏に集中したい人には向いています。

 
筆者
1stは5ポジ~7ポジが出てくるので、
難しい方には2ndをおすすめします!

なお、譜面には一部 sul G 指定がありますが、
音色の違いが大きく出にくいため、初心者が無理にこだわる必要はありません。

音程とリズムを優先したほうが、結果として音楽はよくまとまります。

 
筆者
威風堂々のsulGに関しては、
プロオケや上手いアマオケでも無視されることが多い
です!
演奏してみると、
この曲がただ勇ましいだけでなく、
誇りと気品を大切にした音楽だと実感できるはずです!

まとめ|なぜエルガー《威風堂々》は、今も演奏され続けるのか

  • 初演のプロムナード・コンサートで、史上初の2回アンコールを受けた

  • 国王の提案により、中間部が戴冠式音楽として転用された

  • 「希望と栄光の国」として独立し、世界中に広まった

  • 勇ましさと気品を併せ持つ、分かりやすい構成の行進曲である

《威風堂々》は、ただ勇ましいだけの行進曲ではありません。
長い苦労の末に成功をつかんだエルガーの誇り・信念・達観が詰まった一曲です。

式典で耳にする機会があれば、
ぜひその背景にも思いを巡らせてみてください。

なお、この曲はエルガー自身が指揮した録音も残されており、
そこでは意外なテンポ感や構成の違いを聴くことができます。
興味のある方は、ぜひ聴き比べてみてください!

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