- 松脂の値段によって音質は違ってくるの?
- ちょうどいいレスポンス・摩擦感の松脂が知りたい!
松脂は、1つの製品を長い間使うので、多くの人は数種類しか使ったことがないと思います。
でも、松脂選びは弦と同じか、それ以上に重要だと思います。
今回は、「レザーウッド・ベスポーク」(Leatherwood Bespoke)という、最高品質の松脂を紹介します。
この記事では、バイオリン歴35年以上・ビオラ歴ありの筆者が、レザーウッド・ベスポークの特徴を紹介・レビューします。
この記事を読むと、ベスポークのどういった点が魅力なのか、なぜ注目されているのかが分かります。
レザーウッド・ベスポークの簡単な長所・短所まとめ
- 吸い付くような弾きごこち
- 粒子が細やか ⇒ 運弓にムラがない
- ギシギシ感がない
- とても持ちやすい、塗りやすい
- 自分の演奏スタイルに合わせて2種類から選べる
- 高い
レザーウッド・ベスポークのコンセプト… プロ出身のバイオリニストによる、「質感」にこだわった松脂
レザーウッド・ベスポークは、オーストラリアで開発された松脂です。
開発者は、アンドリュー・ベイカー(Andrew Baker)という方です。
彼は、シドニー音楽院(バイオリン科)・オーストラリア国立大学を卒業しており、在学中に多くの賞を受賞。また、プロオケのコンサートマスターとしても活躍されたことがあります。
彼は、弦楽器の音の「質感」に情熱を注ぐために、開発チームを結成し、世界中の木材を研究して、レザーウッド・ベスポークを作りました。
このレザーウッド・ベスポークは、発売当初からとても上質だと評判になり、一時期は品薄になったほど人気でした。
現在、やわらかく滑らかな「Supple」・輪郭のはっきりした「Crisp」の2種類が展開されています。
なお、開発にあたってはサスティナビリティにも力を入れており、1か月の生産による廃棄物はゴミ箱たった1つ。しかも、その半分はリサイクル可能だそうです。
弾きごこち
粒子がきめ細やかで、吸い付くような感触
ベスポークの大きな特徴は、粒子がきめ細やかなことです。
メリットとして、立ち上がりがとてもきれいです。
どの位置から、どのように弾いても、立ち上がってくれます。
これは、後述する2つの種類どちらでも同じです。
別のメリットとして、運弓がとてもスムーズです。
弓が弦に吸い付くような感触で、気持ちいいです。
きしみ感がない
ベスポークは、松脂の独特のきしみ感があまりありません。
通常、松脂(とくにダークタイプのもの)は、塗りたてのときにザラザラ感を感じたり、少し塗りすぎるときしみが出ることがあります。
しかし、ベスポークはこのようなきしみ感がなく、快適に使うことができます。
持ちやすい、塗りやすい
ベスポークは、とても持ちやすい形状をしています。
上部以外は木材で覆われており、効率的に塗ることができます。
仮に割れてもほぼ飛び散らずにそのまま使えます!(経験談)
「Supple」「Crisp」の違いについて
ベスポークは、粘度のほどよい「Supple」(サプル)と、粘度の高い「Crisp」(クリスプ)の2種類が展開されています。
それぞれの特徴について紹介します。
Supple… なめらか。室内楽などのアンサンブルに最適
Suppleは、ライトタイプの松脂です。
ライトタイプは、引っかかりが控えめで、なめらかな演奏感が特徴です。
(ほかの松脂だと、ベルナルデルが代表的です)
このSuppleも、引っかかりは程よいです。そして弓圧をかけるととても深い音色が出ます。
そのため、しっとりとした曲や、内声の音作りにおいて力を発揮します。
Suppleと相性がいいのは次のような人です!
- ベルナルデルなどのライトタイプからの乗り換え
- 室内楽・オーケストラプレイヤー
- 引っ掛かりはそこそこに、なめらかさ・深さを重視したい人
Crisp… 明瞭。ソリストはもちろん、技巧力のサポートに最適
Crispは、ダークタイプの松脂です。
ダークタイプの松脂は、輪郭がとても分かりやすく、発音感があります。
(ギヨーム・黒猫ダーク・メロスが代表的です)
このCrispも、キレのある引っ掛かりです。それでいて、きしみ感が少なく、音の再現性がとても高いです。
スピッカートや速弾きにおいて心強いです。
また、発音を助けてくれるので初心者にもおすすめです。
Crispと相性がいいのは次のような人です!
- ギヨームなどのダークタイプからの乗り換え
- ソリストや、技巧力をサポートしたい人
- 初心者
- 音の輪郭や、再現性を重視したい人
ブレンドタイプについて
ベスポークは、Supple/Crispだけでなく、両者をブレンドしたものもあります。
たとえばSupple75%・Crisp25%といったものです。
ブレンドタイプは確かにいいですが、デメリットとしてSupple/Crispそれぞれよりも値段が高いです。
結論、ブレンドタイプを買うよりも、
1.Supple/Crispどちらかを買う。
2.気に入ったらもう片方も買い、両方少しずつ塗ってセルフブレンドしていく。
のがおすすめです。
のちにCrispも買って、現在は季節に合わせて分量を変えています。
値段… ベスポーク唯一のデメリット。高い
ベスポークの値段は、2024年4月時点で10,000円弱です。
ベスポークの唯一といってもいいデメリットです。ほかの松脂の3倍ぐらい高いです。
ちなみに容量はほかの松脂とほぼ同じです。
ただし、松脂は数年使うものなので、弦よりもランニングコストに差は出ません。
まとめ
- 弓の吸い付きを良くしたい人
- ムラのない、均一な引っ掛かりを求める人
- 自分好みのブレンドをしたい人
- 上質で長く使えるものならお金をかけてもいい人
松脂は、バイオリンのアクセサリーとしては弦ほど注目されませんが、とても大切なものです。
いろいろな弾きごこちや音色を経験することで、自分の見聞を広めることもできます。
今まで1~2種類の松脂しか使ったことがない人は、ぜひ試してみてください!