筆者には最近悩んでいることがあります。
それは演奏中の「目線」…アイコンタクトです。
以前の筆者は、演奏中にすごく目を合わせていました。
しかし「本当に必要なアイコンタクトって何だろう」と考えた結果…
最近はむしろあまり目を合わせなくなりました(笑)
実際、プロの室内楽奏者は、目線がほとんど合わないのに素晴らしい演奏をしているのです。
この記事では、バイオリン歴35年以上・海外学生コンクール入賞歴ありの筆者が、アイコンタクトのメリット・デメリットについて書きます。
簡単なまとめ
- アイコンタクトはアインザッツの一種
- メリットは多いが、視覚に頼ることで犠牲になる部分もある
- 聴覚とのバランス、そして使いどころが大切
アイコンタクトの本質は「アインザッツ」
アイコンタクトは、突き詰めるとアインザッツの一種です。
(アインザッツとは、演奏前の振りかぶりなど、「せーの」に該当する動作のことです。)
つまり、アイコンタクトの目的は次のとおり。
- 「未来の音楽を決めるときに他者を取り入れる」
- 「自分の演奏を視覚的に伝える」
アイコンタクトのメリット

タイミングを視覚的に合わせられる
アイコンタクトの一番の目的がこれだと思います。
「せーの」は目で見て合わせるのが一番簡単です。
特にオーケストラ曲では、どうしても指揮者の棒やコンマスの弓を見ないと合わせられない場面があります。
また、室内楽でもアイコンタクトを行うと安心感が生まれます。
聴覚では感じられない部分を補える
弓の速さ、ブレスの深さといった要素は、視覚を活用した方がわかりやすいです。
アイコンタクトのデメリット

アイコンタクトのメリットは多いですが、逆に視覚に頼ることで犠牲になる部分もあります。
しかも、使い方を誤るとデメリットのほうが多く出てしまいます。
アイコンタクトのデメリットは、例えば次のとおりです。
音楽の流れを犠牲にしやすい
大原則として、音楽は「それまでの流れ」によって未来のものが決まります。
しかし、視覚に頼ってタイミングを合わせると、それまでの流れが壊れやすいのです。
当たり前ですが、それまでの流れに乗るなら、「聴覚」の感じるままに身体を動かすほうが良いです。
身体が硬くなる
個人的に、筆者がアイコンタクトが嫌いな最大の理由です。
他の人の演奏を見て「あ、予想と違う!」となっても自分の身体はすぐに反応できないです。
そこを無理やり修正すると、音が浮いたり硬くなってしまうのです。
で、次で修正すればよくない?と思ってしまいます…(極端かな笑)
他者依存の演奏になりやすい
過剰な目線合わせは、演奏の大部分が他者依存になるということ。
自分の意志がない、つまらない演奏になります。

いま、筆者が試しているアイコンタクト法

よいアイコンタクトをすれば、音楽の流れ、奏法、自分の意志を保ったまま、さらに上を目指せます。
ということで…
筆者が試しているアイコンタクトは以下のとおりです。(合っているか、出来ているかは別です)
「タイミング」だけを目的にアイコンタクトをしない
タイミングは、なるべくそれまでの流れを信じて弾くようにしています。
どうしても見ないと無理なところは見ますが…
それよりも、「弾き方」「スピード感」をつかむためにアイコンタクトをするようにしています。
弾く0.5~1秒前に見る。逆に弾く瞬間は見ない
事前の呼吸感を見て、余裕をもって合わせられるようにしています。
弾く瞬間に見ても身体が硬くなるだけです。
バランス
聴覚と視覚のバランスをなるべく崩さないように…
どちらかだけに頼らないようにしています。
まとめ
- アイコンタクトはアインザッツの一種
- メリットは多いが、視覚に頼ることで犠牲になる部分もある
- 聴覚とのバランス、そして使いどころが大切
アイコンタクトのメリット・デメリットと、筆者の実践法について紹介しました。
十分なアンサンブル経験を積んでいる方も、修行中の方も、ぜひ良いアイコンタクトについて考えてみてはいかがでしょうか!