【ドイツ国歌の元となったメロディー】ハイドン/弦楽四重奏曲第77番「皇帝」解説

  • 初めてのチームにおすすめの弦楽四重奏曲はない?
  • ハイドンって、曲が多すぎてどれを聴けばいいかわからない!

ハイドンの代表作には、その曲調を示す副題が当てられています。

交響曲「時計」や「驚愕」などが代表的です。

今回の「皇帝」もその名のとおり、堂々・溌剌とした曲で、ひじょうに聴きやすいです。

また、演奏者としても充実感にあふれ、初めて組むチーム(上級者含む)にもおすすめです。

この記事では、バイオリン歴35年以上、コンクール歴ありの筆者が、「皇帝」Op.76-3の特徴、魅力を解説します。

 
筆者
この曲には現ドイツ国歌の元となった旋律が含まれています。
そのルーツも紹介します!
スポンサーリンク

簡単なまとめ

  • 旧オーストリア祝歌(現ドイツ国歌)の生みの親で、変奏曲にしている
  • 明快で堂々とした曲調
  • 楽しいし、各パートの出番も多い名曲

ハイドンの人物像

人物像

ハイドンは、17世紀に活躍した「古典派」の作曲家です。

生涯 77歳と長命。

「皇帝」は晩年の60代で書かれましたが、まだまだ元気だったそうです。

出身はオーストリア

幼少期は聖歌隊に所属し、青年期以後は主に「エステルハージ家」という貴族に仕えながら音楽活動を行いました。

このために、楽団員の演奏のための作曲が多く、数多くの作品が残っています。

筆者
その数、弦楽四重奏曲だけで68曲!

そんな彼の作風はとても明快多くの人にとって親しみやすいのが魅力です。

古典派の作曲スタイルの確立

ハイドンは、クラシック音楽の「骨組み」を確立した人物です。

交響曲では、ベースとなる4楽章制を定着させ、各楽章の役割を明確にしました。

弦楽四重奏曲では、4つの楽器を対等に対話させるスタイルで、室内楽の新しい地平を開いたのです。

生涯で数百の交響曲・弦楽四重奏曲を作ったハイドンでなければ、このスタイルの確立は出来なかったでしょう。

また彼は、とても大人かつ忍耐強い性格で、後進からは 「パパ・ハイドン」とも呼ばれました。

「交響曲の父」という異名は、単にたくさん交響曲を作ったからだけではない…のちの時代まで影響を与えた偉大な人物だからです。

「皇帝」のバックストーリー

「神よ、皇帝フランツを守り給え」

これは、ハイドンが作曲した旧オーストリア帝国祝歌(現ドイツ国歌)で、本曲「皇帝」の大きなテーマとして用いられています。

当時、彼の故郷オーストリアは、ナポレオン軍の侵略に脅かされていました。

そこでハイドンは、故郷の人々にオーストリア人としての誇りを取り戻させ、励ますために、祝歌を作曲したのです。

そしてこの祝歌を、本曲の第2楽章にも組み入れ、変奏曲としました。

作曲後の評価

本曲は、のちにハイドンの最高傑作と評され、「皇帝」の名を与えられました。

本曲が収められた「エルデーディ四重奏曲群」は、他にも「日の出」「五度」といった名曲が揃っており、今日でも人気の曲群となっています。

また、ハイドン自身も、この曲の作曲に大いなる意義と自信を抱き、満足感を持っていました。

後日、彼が重い病に苦しみ、あるいは楽曲の創作に悩んだときには、この曲をピアノで弾くことで彼自身も自信を取り戻していたと言われています。

曲の特徴

とても明快堂々、ハイドンらしい曲です。

第1楽章

堂々としたC-dur(ハ長調)の楽章です。

“ソ ミーファレド” という音型ではじまりますが、これは

“Gott erhalte Franz den Kaiser” (神よ、皇帝フランツを守り給え)

の頭文字となっています。

途中には軽快なリズムがあったり、はたまたバグパイプのような重厚な低音があったりと、

曲調が色とりどりに変化します。

第2楽章

ハイドン自身が作曲した旧オーストリア帝国祝歌による、変奏曲です。

現在のドイツ国歌にも用いられています。

4本の楽器が知性を持って会話をするかのように紡がれます。

第3楽章

舞踏会の如く、麗しく格式高さのあるメヌエットです。

第4楽章

c-mollの最終楽章です。

暗い行路を、ときには決然と、ときにはさ迷うように進みます。

しかし、最後には光を見つけられたか、C-durに戻り、明るい意志をもって完結します。

バイオリン弾きの視点

アマチュアの人が休日や部活動で弾くことを想定しています。

楽しいし、各パート出番も多い!

筆者も大好きな曲です。

なのにハイドンの曲は、なぜかアマチュアでの演奏機会が少ないです。

交響曲は編成の都合もあるので仕方ないですが、こと弦楽四重奏曲に関してはもっと演奏されてほしい…!

筆者
提案すると、よく「えーハイドン??(つまんなそう)」と言われます…

低音の出番が少ないと勘違いされがちですが、ハイドンは低音もおいしいです。(←充実している、の意)

また、難易度もほどよいです。

中級者でも頑張れば弾けるし、上級者でもやることが沢山あります
(リズムの掴み方、和音の取り方など)

単一楽章での演奏としてもおすすめです!

まとめ

  • 旧オーストリア祝歌(現ドイツ国歌)の生みの親で、変奏曲にしている
  • 明快で堂々とした曲調
  • 楽しいし、各パートの出番も多い名曲

ハイドンの「皇帝」を紹介しました。

明朗快活で、何度でも聴いていられる… それでいて、終わった後は充実感がある。

私はこれがハイドンの曲の魅力だと思います。

ぜひ機会があれば味わってください!

スポンサーリンク