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プルトローテーション導入のすすめ|学生オケ・アマオケにこそ有効な理由

以前の記事で、1st2ndバイオリンのプルト配置についてお話ししました。
そして今回も「プルト(席順)」のお話。
きっとこれが最後になると思います。

オーケストラの座席は、ずっと固定する必要はありません。
むしろ、練習中は意識的にローテーションを行うことで、全体の響きやチームワークがぐっと良くなることもあります。

筆者は、バイオリン歴35年以上・オーケストラ歴20年以上。
これまでの経験から感じてきた、プルトローテーションのメリットとデメリットについて、今回はまとめてみたいと思います。

 
筆者
今回は(も)、アマオケや学生オケを前提とした話です。
演奏技術の高いプロオケではまた事情が異なるのでご了承ください!

プルトローテーションのメリット

演奏スタイルを学び合える

プルトを入れ替えると、演奏の引き出しが自然と増えていきます。
さまざまな奏者とペアを組むたびに「この人はこう弾くのか」「このタイミングで合わせるのか」と新しい発見があるのです。

性格の違う奏者同士が組むことで、互いの強みを活かし、演奏に深みが生まれることも。

 
筆者
たとえば、堅実な人に積極的な人を組ませることで、流れのある音楽が生まれやすくなります!

パートリーダーが全体を把握しやすくなる

プルトを変えることで、パートリーダーはさまざまな奏者と並ぶ機会を持てます。
これにより、「誰がどのくらい練習しているか」「どこにつまずいているか」といった奏者の空気を直接感じ取りやすくなります。

 
筆者
時には、普段聞きづらい悩みや提案が自然と耳に入ってくることもあるでしょう!

経験の差を埋め、指導が均等に行き渡る

座席をローテーションすることで、自然と「教わる/参考にする」関係が生まれ、技術や感覚が均等に広がっていきます。
特に学生オーケストラやアマチュアオケでは、経験者と初心者の差が大きいこともしばしば。
「前列=経験者」「後列=初心者」と固定するより、ずっと健全な練習環境になるでしょう。

 
筆者
私の学生オケでもプルトローテがありました。
隣の先輩によって考えていることが違ったため、とても参考になりました!

後列奏者のモチベーション維持にもつながる

後列奏者は、とても重要である一方、疎外感を感じやすい位置でもあります。
シンプルにパートの音を聴きづらいからです。

後列奏者も、練習中に前の席を経験できると、パートの音を掴みやすくなります。
また、疎外感を軽減させて練習への集中力も上がります。

筆者
ずーっと最後列だとつまんないですよね(笑)

デメリット

ここまでメリットをお伝えしてきましたが、やりすぎによるデメリットも勿論あります。

divやSoliの指定が複雑な場合、混乱を招く

オーケストラ譜次第では、ローテーションに注意が必要です。
たとえば次のような指示。

  • 「div」指定: 上段と下段が異なる旋律を演奏する
  • 「前Soli」指定: 前から数プルトのみが演奏する

練習中にプルトを頻繁に変えていると、「今、自分が何を弾くべきなのか」が分からなくなる危険があります。

筆者
以前、ダフニスとクロエという曲で、考えなしにプルトを混ぜたら大変なことになりました…笑

緊張感が出にくい

あまりにも頻繁に入れ替えを行うと、本番に向けた集中や責任感が希薄になる場合も。
「どうせまた変わるから…」という意識が芽生えるからです。

本番が近づいてきたら、プルトを固定し、最終的な連携をしっかり作っていくのが望ましいでしょう。

参考 ― 筆者のプルトの組み方

筆者の実際のプルトの組み方や、表裏の決め方はこちらに書いています。
あくまで個人の考え方ですが、よければ参考にしてください!

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まとめ

  • 演奏スタイルを学び合える
  • リーダーが全体を把握しやすい
  • モチベーションの維持につながる
  • 固定のタイミングを見極める必要がある

プルトローテーションは、音楽的にも人間関係的にも、多くのメリットをもたらしてくれます。

もし、失敗した場合でも…
「このペアは相性が良くないんだな」「この人は前に置いた方がいいな」などと勉強につながります。

座席の配置ひとつで、オーケストラの雰囲気や響きは意外と大きく変わるもの。
今のやり方に少しでも迷いや悩みがあるなら、試しにローテーションを取り入れてみる価値はあるでしょう!