新しい弓を買いたくて試奏していると、同じ値段でもいろいろな性格の弓に出くわします。
コシの強い弓 柔らかい弓 跳ねやすい弓 重い弓…
今回は、この中で「堅い弓」と「柔らかい弓」について焦点をあてます。
筆者は現在堅い弓を使っているのですが、実は柔らかい弓のほうが好きです。
今回は、値段やクオリティは同レベルだと仮定したうえで、堅い弓と柔らかい弓の違い、演奏上の特徴などをお話しします。
弓選びの際に、こうした基準で考えるのもいいかもしれません。
なお、今回は筆者の主観や経験談が大いに含まれているのでご承知おきください。
まとめ
- 「堅い・柔らかい」どちらにも良い弓がある
- 堅い弓は反応が分かりやすく、小回りが効きやすい
- 柔らかい弓は少し沈むような感覚で、引出しが多彩
- 初心者には堅い弓のほうがおすすめ
前提:「堅い・柔らかい」どちらにも良い弓がある
前提として、弓の堅さと、楽器を響かせる力(振動特性など)は別モノです。
「柔らかいけれどよく鳴る弓」もあるし、「堅いけれど弱い弓」もあります。
ぐにゃぐにゃに柔らかいのに、コシがあって鳴りの強い弓もあるのです。
この堅さ・柔らかさは弓の木や製法によるものです。
なので、堅い弓の毛をゆるく張っても、柔らかい弓のそれにはなりません。逆も然りです。面白いですね。
自分の好き嫌い・奏法のクセによってベストな堅さは異なると思います。
堅い(ハリのある弓)の特徴、メリット
堅い弓は、弓の剛性が高いです。
筆者が感じる一番のメリットは、手元の感触が分かりやすく小回りが効きやすいことです。
弓が沈みにくく、反応がより素直に手へ伝わるからです。
また、音も張りやすいです。
圧力をかけても操作性が変わらないからです。
そのほか経験上、堅い弓は、跳弓など技巧的なパッセージを弾きやすいです。
体感ですが、これらの理由から堅い弓を好む人のほうが多いです。
堅い弓のデメリット
軽く動かしただけでも音になってしまうことです。
なにを弾いても同じ発音になりやすく、意識しないと引出しを作りづらいです。(深い発音とか、柔らかい発音とか)
また、堅い弓の反応のよさに頼っていると、奏法が雑になりやすいです。
たとえ弾き方がおろそかでも音になってしまうためです。
そのほか、堅い弓には発音の鋭いものが多く、ビビってしまう弾き手もいます。
(マイルドな発音の弓ももちろんあります)
これにビビると、音の鋭さから逃げるように、浮いたような奏法になってしまいます。
とくにオケを始めて数年以内の人が陥りやすいです。
オケだと、人より尖った発音が嫌われがちですからね…
鋭い発音自体はまったく悪いことではないので、もしこういう悩みの人がいたら、きちんとレッスンに行って解決するのをおすすめします。
柔らかい弓(ソフトな感触の弓)の特徴、メリット
柔らかい弓は、弓の剛性が低めです。
やや沈むような感覚があります。
筆者が感じる一番のメリットは、発音までに丁寧な準備ができることです。
発音の引出しを意識しやすいです。
そのほか、弓が宙に弾みにくいので、テヌート・デタッシェなどの基本奏法が弾きやすいです(経験談です^^;)。
ゆったりした曲が好きな人や、内声奏者には、柔らかい弓を好む人が多いと思います。
ウィーンフィル御用達の工房ではこういった弓が多いらしいです。
(ウィーンフィルで使われる楽器は、ほぼすべて同じ工房で作られています)
柔らかい弓のデメリット
力みやすいことと、慣れないと小回りが効きづらいことです。
クッション性があるため、堅い弓に比べて手元への反応が分かりにくいためです。
また、弓をあえて離す奏法(サルタートなど)は苦手な傾向にあります。
そのほか、力みやすいので初心者にはあまり向きません。
補足
筆者は柔らかい弓が好きですが、柔らかい弓は探すのが大変なのですよね…
オールドボウには柔らかくて良い弓が多いのですが、値段が洗練されていてかなり高いです。
モダンボウなら割安の弓を見つけやすいが、基本的に堅い弓ばかりです。
また、買うときも注意があって、柔らかい弓はへたった弓と混同しやすいです。
これらの面からも、柔らかい弓は練度が上がってから探す弓なのかなと思います。
まとめ
- 「堅い・柔らかい」どちらにも良い弓がある
- 堅い弓は反応が分かりやすく、小回りが効きやすい
- 柔らかい弓は少し沈むような感覚で、引出しが多彩
- 初心者には堅い弓のほうがおすすめ
今回は「堅さ」「柔らかさ」に焦点をあてました。
どちらが良いとかではなく、個性のお話です。
世の中には色々な弓があって面白いですよね。
弓を選ぶことがあったらぜひ参考にしてみてください!