「室内楽って、地味。」
そんなイメージを持っていませんか?
人数も少ないし、派手な演出もない。
なんだかオーケストラより地味な気がする――
でも実は、
室内楽には“かっこよさ”がギュッと詰まっているんです!
少人数だからこそ、一人ひとりが主役。
息を呑むような緊張感、ぶつかり合う音、演奏者の熱気がひしひしと伝わってきます。
今回は、歴35年以上のバイオリン・ビオラ弾きが、
「かっこいい!」と心から思える名曲を4つ厳選してご紹介します。
クラシックに詳しくない方でも、きっと心をつかまれるはず。
まずはこの豪華すぎる1曲から――
ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲第2番

豪華で情熱的!民族色あふれる傑作
※古い音源なので聴きづらいかもしれません!(以下同様)
流麗な序奏からの、まるで花火が弾けるような鮮やかさ――
ドヴォルザークの《ピアノ五重奏曲 第2番》は、“反則級”のかっこよさを誇る室内楽の代表作です。
この作品は、ピアノと弦楽四重奏(ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ)による編成。
ピアノが加わることで音の厚みがグッと増し、オーケストラのようなスケール感すら感じさせます。

そのため、各パートの掛け合いが絶妙に設計されており、まるで音で会話しているかのような展開が続きます。
郷愁を誘う旋律、心を震わせるハーモニー、そして燃えるようなリズム。
まさに「聴いていて全く飽きない」、そんな1曲です。
音の宝石箱のような第3楽章

第3楽章の「フリアント」は、チェコの農民舞曲。
情熱と哀愁が入り混じったような、独特のグルーヴが生まれます。
この曲最大の魅力は、ボヘミア地方の民族色。
ドヴォルザークは生まれ故郷の伝統音楽をこよなく愛し、その要素を旋律やリズムに巧みに織り込んだのです。
シューベルト:弦楽四重奏曲第14番《死と乙女》

死と向き合う、緊迫のドラマ
冒頭の、時が止まるような衝撃――
シューベルトの《弦楽四重奏曲「死と乙女」》は、聴く者に“生と死のドラマ”を突きつけるような、凄みを持った作品です。
作曲されたのは、シューベルトが病に倒れていた晩年。
梅毒の治療中という厳しい状況のなかで書かれたこの曲は、作曲家の死生観が色濃くにじむ一作とも言われています。

歌曲の王と言われる美しさも

第2楽章は、自作の歌曲《死と乙女》の主題を用いた変奏曲。
死を恐れる少女に対して、死神が優しく語りかける…という詩の情景です。
彼は「歌曲の王」とも称される作曲家でした。
その称号にふさわしく、弦楽四重奏でも言葉を持たない“歌”のような旋律が紡がれています。
この作品は、ただ暗いだけの音楽ではありません。
美しさと闇、安らぎと緊張が共存する構造が、この曲の深みを作っているのです。
バルトーク:弦楽四重奏曲 第4番

極限の攻撃性!鋼のアンサンブル
「えっ、これって本当にクラシック?」
初めて聴いた人の多くがそう感じるのが、バルトークの《弦楽四重奏曲 第4番》です。
1928年に書かれたこの作品は、今なお“音の衝撃”として響きます。
まるでロックバンドのように、激しく、鋭く、そして自由。
弦楽器が弓の背で弦を叩いたり、ピチカートだけで楽章を構成したりと、奏法もかなりアバンギャルド。

バルトークはハンガリーを代表する作曲家であり、民族音楽の収集と研究を熱心に行っていました。
その影響もあって、この曲には東欧のリズム感や音階の香りが随所に感じられます。
近現代の四重奏なら、ショスタコーヴィチもおすすめ
もしバルトークに興味を持ったなら、ぜひ併せて聴いてほしいのが
ショスタコーヴィチの《弦楽四重奏曲 第8番》です。
なんと、この曲を書いたあと自●するつもりだったのです。
“D-Es-C-H”という、作者のファーストネームを表した音階も執拗に登場します。
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲

16歳の天才による青春のきらめき
弦楽器8人による、分厚くエネルギッシュな響き。
メンデルスゾーンの《弦楽八重奏曲》は、青春の爆発のような作品です。
メンデルスゾーンは、幼いころから優れた教育を受け、
10代ですでに数十曲もの名作を生み出していた天才作曲家です。
広い世界を駆け巡るような曲

エネルギーに満ちあふれる第1楽章、シチリアーノ風の第2楽章。
第3楽章は、文豪ゲーテの『ファウスト』に影響を受けたとも言われており、
不気味さと神秘的な緊張感が漂います。
第4楽章(↑の音楽)では再び疾走感が戻り、まるで広い世界を駆け抜けていくような感覚に包まれます。
メンデルスゾーンは他にも、《弦楽四重奏曲 第6番》など瑞々しい作品を多数残しています。
“若さ+技巧+知性”が融合した室内楽を楽しみたい方にぴったりです!
まとめ|室内楽には“かっこよさ”が詰まっている!
「室内楽って、地味。」――
そんなイメージは、もうすっかり覆ったのではないでしょうか?
- 🎹 豪華絢爛で民族色豊かな《ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲》
- 💀 生と死を描くドラマ《シューベルト:死と乙女》
- 🔥 音が刺さる衝撃の現代曲《バルトーク:弦楽四重奏曲第4番》
- 🌊 若き天才の青春爆発《メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲》
“かっこよさ”にも、いろんな形がある。
室内楽には、クラシックの魅力がギュッと凝縮されています。
気になった曲があれば、ぜひフルで聴いてみてください!