- インフェルド、実は使ったことがないんだけどどんな特徴があるの?
バイオリン奏者なら、一度は「インフェルド」の名を耳にしたことがあるかもしれません。
同時に、なかなか話題にされない弦でもあります。ネット上では、エヴァピラなどのパワフルな弦が注目されやすいからです。
しかし、インフェルド赤の暖かい音色と使いやすさは、あらゆる弦のなかで群を抜いています。
コスパも非常によく、プロの室内楽奏者にも愛用者が多いです。
この記事では、バイオリン歴35年以上・コンクール歴ありの筆者が、インフェルド赤の音色、操作性、コストパフォーマンスなどを紹介・レビューします。
この記事を読むと、インフェルド赤のどういった特徴が魅力なのかが分かります。
簡単な長所・短所まとめ
- 暖かく、重厚
- 特有の味わい・テクスチャーがある ⇒ 表現力をサポート
- 張力がほどよい
- ランニングコストが非常によい
- ハッと惹きつける音は出しづらい
- 特有のテクスチャーが合わない奏者もいる
コンセプト・・・ 暖かさ・重厚さを意識し、ドミナントを改良
インフェルド赤は、バイオリン弦の老舗メーカー「トマスティーク(Thomastik)」社が開発した商品です。
コンセプトは大きく2つです。
インフェルドは、ドミナントをベースに、音の聴き触りのよさや耐久性を改良。
さらに、音色による使い分けを想定し、「赤」と「青」の2種類を展開しました。
- 赤…暖かく、重厚さのある音
- 青…明るく、ハッキリとした音
張力がドミナントとほぼ同じで、当時のユーザーがほかの弦から乗り替えやすいようにされています。
また、先端の巻線の色もドミナントと全く同じです。
いまドミナントを使っている方は、インフェルドでも違和感なく弾けるはずです。
インフェルドシリーズは、数多くあるバイオリン弦の中でも歴史の長い作品です。
それだけ優秀で、ドミナントと同じくらいスタンダードとして認められています。
音色・・・ 暖かく、ほどよい味付けがある
インフェルド赤の音色は上の画像のとおりです。
- 暖かくダークな色彩
温度感はオレンジ系。
焚火にあたるような暖かさがある。 - テクスチャーを感じる質感
インフェルド最大の特徴は、この質感。
響きにうねりが生まれ、とても面白い音です。
表現力が苦手な人でも、弦が良い感じにサポートしてくれます。 - 標準的なピント
焦点が強すぎず、空間にほどよく染みわたる。
抜けるような音はやや出しづらいが、その分周りに溶けやすい。
総括すると、ソリスティックではないものの、シーンを問わず使える弦です。
特に、オーケストラ・室内楽などのアンサンブルで非常に使いやすいです。悪目立ちせず、心地よく弾くことができるからです。
ハーモニー役としても向いています。内声担当にはぜひおすすめしたいです。
苦手なシーンはあまりないですが、ハッと目を引く音色ではありません。
映える音、花がふわっと咲くような音…こういったイメージを求めるなら、別の弦のほうが向いています。
また、(少数ですが)この弦特有の味付け・うねりが、あまり好きじゃない奏者もいます。
プロの演奏家では、クレモナ四重奏団の2ndバイオリンであるアンドレオーリ氏が愛用者です。
日本だと、有名なわりにあまり使用者を見かけないかも?
張力(音量、操作性)…標準的
インフェルド赤の張力は標準的です。
ネット上ではよく張力が強いと言われていますが、数値上は普通です。
- メリット:
- 力まずに大きな音を出せる。
- 落ち着きを感じられる音を出せる。
- オールド楽器にも張りやすい。(ストラド所持者も使用している)
- デメリット:
- 最近の弦に比べると、弓圧の許容範囲に劣る。
(あまり無理な弾き方はできない) - 音の伸び・輪郭をもっと重視する人には物足りないかも。
- 最近の弦に比べると、弓圧の許容範囲に劣る。
インフェルド赤の張力はとてもいい塩梅だと思います。張力が高すぎると指が痛い、力みやすい等のデメリットがあり、一方、低すぎると音が潰れやすい等のデメリットがあるからです。
操作性は標準的です。
うまく弓圧をコントロールしたいです。重厚な音のため、つい弓圧を掛けたくなりますが、他のパワフルな弦に比べるとさすがに潰れやすいです。
コスパ(値段、寿命)…とても優秀
- 本番で使うなら ⇒ 2~3か月程度
- 練習するだけ ⇒ 3~5か月程度
※現在の筆者の演奏時間は、平日30~1時間程度、休日1~3時間程度です。
もっと弾く方や、音大生、プロの方はこれより短くなると思います。
値段:2024.4時点で8,000円~9,000円
(円高の影響もあり高めです)
ランニングコストがとても良いです。正直、長持ち!って感じではありませんが、何より値段が手ごろです。
劣化が始まると、インフェルド独特の味付け・うねりが失われ、魅力が一気になくなります。
ADG線をインフェルド赤、E線をゴールドブラカット(プレミアム)にするのもおすすめです。
この2種類は音色的にも相性がよいです。コスパもさらに良くなります。
その他長所、短所
◎非常に手に入りやすい(分数バイオリン用を除く)
インフェルド赤は大抵どこの店でも売っており、非常に入手しやすいです。
◎DG線の評判がとてもよい
インフェルド赤のDG線は、特に響きが豊かだとされ、評判がよいです。
理由は不明ですが、実際に私も体感しています。
▲E線はほかの弦がいいかも
インフェルド赤のE線は、ほかの弦に比べて線の細い印象があります。
また、E線は金メッキのため、楽器によっては音が裏返りやすいです。
これらが嫌だという人には、E線のみゴールドブラカット・プレミアムの0.26にするのがおすすめです。
インフェルド赤とゴールドブラカットの相性はとても良いです。
金メッキが絶対嫌な人はプレミアム(ブラススチール)がおすすめ。
まとめ
- 暖かく重厚な音色が好きな人
- ほどよい張力を好む人
- 初心者で新しい弦を試してみたい
- ランニングコストも重視したい
暖かさ、柔らかさ、そしてしっかりした弾きごこちが好きな人には、インフェルド赤はぜひ試してほしい弦です。
有名でよく売られている弦は、第一印象的に注目されにくいです。でも、オケ・室内楽をやるならインフェルド赤はとても魅力的です。
もし自分の好みに合えば、コストパフォーマンスのよさも相まって、最高の弦になるでしょう。
とても面白い音でもあるので、ぜひ試してみてください!