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バイオリン協奏曲の萌芽?メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第4番を解説!

流麗で、ダークな世界観の名曲——

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第4番は、知名度こそ高くないものの、奥深い魅力を秘めた作品です。

麗しくも影のある旋律、四声の繊細な絡み合い。

そして、実はバイオリン協奏曲の前身ともいわれる構成——力強さが宿っているのです。

 
筆者
あの協奏曲の情熱を、弦楽四重奏曲でも楽しめます!

この曲が書かれたのはメンデルスゾーンの充実期
彼が指揮者・作曲家として大きな成功を収めていたころで、そのエネルギーが全体に宿っています。

本記事では、バイオリン歴35年以上の筆者が、
弦楽四重奏曲第4番の誕生背景や聴きどころを解説します。

  • この曲の特徴と生まれた背景
  • ダークな世界観の由来のヒント
  • 各楽章の聴きどころ

この曲はどのように生まれた?

人生の充実期に作られた曲

弦楽四重奏曲第4番は、1837年、メンデルスゾーンが28歳のときに作られました。

彼の生涯はわずか38年と短命でしたが、この頃はまさに創作活動のピークでした。

彼は、作曲だけでなく、指揮者・音楽監督としても活躍していました。
拠点としたライプツィヒでは、彼の主導で《聖パウロ》が成功。
さらに、ベートーヴェンの《第九》を感動的な演奏で再評価させるなど、音楽界での影響力を大きく広げていました。

筆者
妻セシルとも結婚し、公私ともに満たされていた時期です!

多忙を極めながらも創作意欲は衰えず、作品にはその活力が刻まれています。

3つの弦楽四重奏曲をほぼ同時期に完成

メンデルスゾーンの中期弦楽四重奏曲——「第3・第4・第5番」は、実はほぼ同時期に完成しました。

実際に作曲されたのは「第4番 → 第5番 → 第3番」の順。
本曲は実質的には3番目の作品といえます。

3曲はいずれも個性が異なり、作風の幅広さを感じさせる仕上がり。

彼の弦楽四重奏曲は初期・後期が有名ですが、
内容の充実さでは、これら中期作品は外せないのです!

 
筆者
メンデルスゾーンを語るうえでこの3曲はぜひ知ってほしい作品です!

バイオリン協奏曲の前身?

本曲のダークで物語的な世界観は、あの名作《バイオリン協奏曲》に通ずるところがあります。

この翌年、1838年には、バイオリン協奏曲の構想が始まっていたことが分かっており、
本曲にはその芽生えを感じさせるのです。

とりわけ第1楽章には、協奏曲と通じる特徴が見られます。
たとえば、冒頭の伴奏とメロディーの関係性(しかも両方ともAllegro appassionato)。
そして、調性も同じe-moll(ホ短調)。
この四重奏曲が「協奏曲の萌芽」を感じさせるのも頷けます。

初演は作曲と同じ1837年の10月、ライプツィヒで行われました。
聴衆の反応は上々で、第2楽章はアンコールとして繰り返し演奏されました。

  • 人生の充実期に作られた
  • それぞれ個性の違う中期作品の名曲たち
  • バイオリン協奏曲の前身ともいえる!

各楽章の内容、聴きどころを紹介!

第1楽章|バイオリン協奏曲を想わせる世界

古い音源なので聴きづらいかもしれません!(以下同様)

冒頭の情熱的なメロディー、そして、流れるような16分音符のモチーフが印象的。
このモチーフが全体を貫き、ダークな色調と緊張感を生み出しています。

のちのバイオリン協奏曲を思わせる部分が多く、
「協奏的なエネルギー」を4つの楽器で存分に感じられる点が魅力です!

 
筆者
バイオリン協奏曲のような情熱を、
独奏ではなく室内楽での響きとして味わえます!

第2楽章|「真夏の夜の夢」に通ずるスケルツォ

メンデルスゾーンの「スケルツォ力」が発揮された楽章。

16分音符の高速なトレモロとスタッカートが特徴的で、
まるで聴く者に「真夏の夜の夢」を思わせるようです。

初演時にはこの楽章がアンコールで再演されるほど、聴衆の心をつかんだと言われています。

筆者
ちなみに演奏者としては死ぬほど難しいです…
(こんなの全員で弾かせるなよ…苦笑)

第3楽章|穏やかに流れるアンダンテ

やわらかく穏やかな流れが魅力の緩徐楽章。
胸の高鳴りをそっと鎮めてくれるような、優しさに満ちています。

メンデルスゾーンは、「この楽章を重たく演奏してはならない」との注意を書き入れています。
注目ポイントは16分。停滞せず、優しい流れを生み出しているのです。

第4楽章|暗く情熱的なフィナーレ

冒頭の緊張感がふたたび戻ってくる終楽章。
より力強く、情熱的な推進力をもって展開されます。

衝撃のように差し込むsfやアクセントが、ドラマティックな起伏を作り出し、
スピード感ある展開の中に、ふと現れる第2主題の美しさが映えます。

激しさと優雅さが交錯するこの楽章。
まさにフィナーレにふさわしい聴きどころです!

まとめ|知名度以上の価値ある名作

  • 人生の充実期に作られた名作
  • 協奏的なエネルギーを4人で感じられる
  • 軽快な2楽章、柔らかい3楽章など、他にも聴きどころがたくさん!

短い生涯のなかでも、最も充実していた時期に書かれたこの作品には、
ほとばしる創作への情熱が感じられます。

バイオリン協奏曲を彷彿とさせる情熱、そして4人による緻密なハーモニー…
四重奏の魅力を再発見させてくれるでしょう。

 
筆者
正直バイオリン協奏曲より遥かに難しいですが(笑)
弾けたらかっこいいです!

知る人ぞ知る名曲として、洗練された響きを楽しんでください!

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