最初の一曲で、そのカルテットの楽しさは半分決まります。
カルテットをやろう!となったとき、じつは「最初の一曲」に向いた曲・向いていない曲があります。
この記事では、初結成におすすめの弦楽四重奏曲17曲を、奏者目線の難易度付きで紹介します。
「高い完成度を目指したい」「4人全員で楽しみたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
(初結成でなくても、「次の一曲」選びの参考になるはずです)
- 初結成のカルテットにおすすめの弦楽四重奏曲17選(難易度の早見表つき)
- 迷ったら選びたい鉄板の3曲
- 曲が決まったあとの、定番楽譜(出版社)の選び方
結論:迷ったらこの3曲
まず結論から。初結成で迷ったら、次の3曲がおすすめです。
| 迷ったらこの3曲! | |
| ハイドン『皇帝』 | 明朗快活で華やか。筆者イチオシ |
| ベートーヴェン 4番 | キャッチーで聴き映えする短調の名曲 |
| ドヴォルザーク『アメリカ』 | 観客の心を一気に奪うメロディー |
この3曲に共通するのは、調性がシンプルで各パートの役割が分かりやすく、しかも全パートにやりがいがある点です。
初結成のチームは、お互いの音程感やバランスがまだ分かっていません(これは上級者同士でも同じです)。
だからこそ、合わせる土台が作りやすい曲を選ぶと、完成度がぐっと上がります。
そしてもうひとつ大事なのが、やりがい。
この3曲は、どのパートにもメロディー・内声・ベースの役割が順番に回ってきます。
「ずっと伴奏だけ」のパートがないので、4人全員が楽しめます。
この記事の17曲は、すべてこの基準で選んでいます。
なお各曲の「技術」は弾く難しさ、「曲作り」はアンサンブルをまとめる難しさの目安です。

おすすめ17曲の難易度早見表
17曲を一覧にまとめました。
気になる曲の名前をタップすると、その解説(音源つき)へ飛べます。
※推し度=筆者のおすすめ度(★が多いほどおすすめ)/技術=弾く難しさ/曲作り=アンサンブル・和声面の難しさ
| 曲名 | 推し度 | 時間 | 雰囲気 | 技術 | 曲作り |
| ハイドン | |||||
| 『騎士』 | ★ | 21分 | 勇壮 | やや楽 | 楽 |
| 『五度』 | ★★★ | 22分 | ダーク | 標準 | 楽 |
| 『皇帝』 | ★★★ | 24分 | 明朗 | やや楽 | 楽 |
| 『日の出』 | ★★ | 23分 | 優雅 | やや楽 | 標準 |
| モーツァルト | |||||
| 『春』 | ★★ | 29分 | 軽やか | やや楽 | 楽 |
| 『狩』 | ★★★ | 25分 | 爽やか | 標準 | やや難 |
| 『不協和音』 | ★★★ | 30分 | ユーモラス | 楽 | やや楽 |
| ベートーヴェン | |||||
| 1番 | ★ | 27分 | 溌剌 | 標準 | やや難 |
| 2番 | ー | 24分 | 優雅 | 標準 | 楽 |
| 3番 | ★ | 24分 | 伸やか | やや楽 | 楽 |
| 4番 | ★★★ | 23分 | 劇的 | 標準 | やや楽 |
| 5番 | ★ | 27分 | 自由 | やや難 | やや難 |
| 6番 | ★★★ | 25分 | 充実 | やや難 | 標準 |
| メンデルスゾーン | |||||
| 1番 | ★★ | 24分 | 柔らか | 標準 | やや難 |
| 2番 | ★★★ | 32分 | 流麗 | やや難 | やや楽 |
| ドヴォルザーク | |||||
| 『アメリカ』 | ★★★ | 26分 | 伸やか | 標準 | 楽 |
| チャイコフスキー | |||||
| 1番 | ★★ | 26分 | 暖かい | 標準 | 標準 |
ハイドン「エルデーディ四重奏曲群」

ハイドンの特徴は「明快」「楽しい」。
奏者同士の対話を目指した作曲家です。初結成にイチオシの曲揃いです!
『騎士』|ギャロップが弾む中期の名曲
| 74番 g-moll | 21分(5/6/4/6) | 勇壮 |
| 推し度 ★ | 技術:やや楽 | 曲作り:楽 |
▶4楽章 主題
↑古い音源のため聴きづらいかもしれません!(以下同様)
かっこいい曲です。4楽章、馬が駆けるようなギャロップのリズムが副題の由来。
1楽章の指さえ回れば弾きやすい1曲です。
はずむ曲調が好きで、リズムの取り方に自信のあるチームにおすすめします!
『五度』|古典派を代表する短調
| 76番 d-moll | 22分(9/6/3/4) | ダーク |
| 推し度 ★★★ | 技術:標準 | 曲作り:楽 |
▶1楽章 主題
冒頭、A-D-E-Aの「五度」が鐘のように鳴り響きます。
堂々とした短調で、弾くほどに中身の詰まった充実作です(1stはやや忙しめ)。
分厚い古典派を楽しみたいチームにおすすめです。
『皇帝』|ドイツ国歌の元となった名曲
| 77番 C-dur | 24分(7/7/4/6) | 明朗 |
| 推し度 ★★★ | 技術:やや楽 | 曲作り:楽 |
▶1楽章 主題
明朗快活。2楽章では、現ドイツ国歌の元となった気高い旋律を4人で歌い継ぎます。
毅然とした音楽から歌う旋律まで、幅広く楽しみたいチームへ。
筆者イチオシの曲です!
『日の出』|朝日のような優雅さ
| 78番 B-dur | 23分(9/6/4/4) | 優雅 |
| 推し度 ★★ | 技術:やや楽 | 曲作り:標準 |
▶1楽章 序奏
朝霧の中を、ゆっくりと日が立ち昇る——そんな冒頭のメロディーで有名です。
1st独壇場と思われがちですが、実は4声部すべてに出番のある良曲。
音程感覚に自信のあるチームにおすすめします。

モーツァルト「ハイドンセット」

モーツァルトの特徴は「軽快」「ユーモラス」。
腕に自信がない人でも弾きやすい曲が多いです。もちろん上級者にもおすすめ。
※アイネクやディベルティメントなど、誰もが知る曲は省略します。
『春』|軽快な楽想が好きなら
| 14番 G-dur | 29分(8/8/7/6) | 軽やか |
| 推し度 ★★ | 技術:楽 | 曲作り:楽 |
▶1楽章 冒頭
窓を開けたら春風が入ってきた——そんな麗らかさが全曲に流れています。
余裕をもって弾けるとさらに素敵です。
明るい曲に取り組みたいチームにおすすめします。
『狩』|実はかなり奥深い名曲!
| 17番 B-dur | 25分(8/4/7/6) | 爽やか |
| 推し度 ★★★ | 技術:標準 | 曲作り:やや難 |
▶1楽章 主題
角笛ふうの冒頭に導かれて、色づいた秋の森へ入っていくような充実作。
モーツァルトの中ではやや上級者向けかも?
拍子感のあるチームにおすすめです。
『不協和音』|シンプルで弾きやすい
| 19番 C-dur | 30分(9/9/6/6) | ユーモラス |
| 推し度 ★★★ | 技術:楽 | 曲作り:やや楽 |
▶1楽章 序奏
▶1楽章 主題
不穏な序奏で始まったかと思えば、以降は冗談のように軽快。
あまり技術に自信がないチームでも安心しておすすめできます。あればさらに楽しい!

ベートーヴェン前期

特徴は「発展的」。
ハイドン・モーツァルトが作った古典派をベースにして、さまざまな発展を与えた人物です。
腕に自信があるチームなら初結成でもいけるでしょう。
1番|本格的に取り組みたいなら
| F-dur | 27分(9/9/3/6) | 溌剌 |
| 推し度 ★ | 技術:標準(4movが難) | 曲作り:やや難(2movが難) |
▶1楽章 冒頭
元気で明るい曲、ただし2楽章だけは「墓」を想像したという悲壮な世界です。
1楽章は単純明快で、単一楽章としてもおすすめです。
本格的に取り組みたいチームに向いています。
2番|『挨拶』とも呼ばれる颯爽さ
| G-dur | 24分(8/6/4/6) | 優雅 |
| 推し度 ー | 技術:標準(1stが難) | 曲作り:楽 |
▶1楽章 冒頭
『挨拶』という隠れた副題のとおり、颯爽とした佇まいの曲です。
やや1stに技術が寄っているので、バイオリンに自信があればどうぞ。
3番|晴れ渡る伸びやかさ
| D-dur | 24分(8/7/3/6) | 伸やか |
| 推し度 ★ | 技術:やや楽 | 曲作り:楽 |
▶1楽章 冒頭
デビューしたての頃の、晴れ渡る空のように伸びやかな1曲。
小回りが多いので、指回りのよいチームにおすすめです。
4番|暗闇を疾走する名曲
| c-moll | 23分(8/7/4/4) | ダーク |
| 推し度 ★★★ | 技術:標準(1stが難) | 曲作り:やや楽 |
▶1楽章 冒頭
難聴を自覚した頃の、絶望が影を落とす暗い疾走。
それでいてキャッチーで聴き映えするので、前期の中では一番おすすめ。
弾き応えも十分なので、やりがいを感じたいチームにぜひ!
5番|変奏曲を弾いてみたいなら
| A-dur | 27分(7/5/9/6) | 自由 |
| 推し度 ★ | 技術:やや難 | 曲作り:やや難 |
▶1楽章 冒頭
優雅で、とても自由な雰囲気の曲です。歌心のある人にぴったり。
目玉は変奏曲ふうの3楽章です。
ベートーヴェン初期の中では総合的に一番大変で、腕に自信のあるチームにおすすめします!
6番|充実しててやりがいあり!
| B-dur | 25分(6/7/4/8) | 充実 |
| 推し度 ★★★ | 技術:やや難 | 曲作り:標準 |
▶1楽章 冒頭
心躍るような充実感が魅力。ただし4楽章冒頭だけ、雷に打たれたかのようにシリアスです。
5番ほどではありませんが、弾くのがやや難しめ。技術力のあるチームならぜひ!

メンデルスゾーン前期

特徴は「ロマンチック」「旋律的」。
古典派をベースに自由で伸びやかな旋律を与えた、初期ロマン派の人物です。
旋律的な音楽を好むならぜひおすすめします。
1番|芳醇な柔らかさ
| Es-dur | 24分(8/4/4/8) | 柔らか |
| 推し度 ★★ | 技術:標準(4movが難) | 曲作り:やや難 |
▶1楽章 主題
芳醇なワインのような柔らかさ。ただし4楽章だけ、稲妻のようにドラマチックです。
筆者はこの曲が大好きです。
♭が多いので、音程感覚に自信のあるチームにおすすめです。
2番|ロマンチックな有名曲
| a-moll | 32分(9/8/6/9) | 流麗 |
| 推し度 ★★★ | 技術:やや難(1stが難) | 曲作り:やや楽 |
▶1楽章 序奏
▶1楽章 主題
問いかけに始まり、答えを待つ——全体が恋文のようにロマンチックな曲です。
1番よりやや技巧的で、2楽章以降の1stはヴィルトゥオーゾチック。
技術に自信があればぜひトライしてください。
ドヴォルザーク

特徴は「郷愁的」「心を奪うメロディー」。
チェコの作曲家です。民族音楽の要素が入っており、郷愁感を覚える曲が多いです。
彼の紡ぐメロディーは、多くの名作曲家をも虜にしました。
『アメリカ』|心を奪うメロディーの連続
| 12番 F-dur | 26分(9/8/4/5) | 伸やか |
| 推し度 ★★★ | 技術:標準(1stがやや難) | 曲作り:楽 |
▶1楽章 冒頭
大地を駆ける少年のようなメロディーに、機関車のようなリズム。
観客の心を一気に奪う曲です。
全パート楽しくておすすめ。ただし1stに高音の往復が多いのだけ注意です。
チャイコフスキー

特徴は「情熱的」「民謡風」。
この時代は初結成向きではないものが多いですが、チャイコには弾きやすくて素敵な曲がひとつあります。
1番|大人びた歌心が魅力
| D-dur | 26分(8/7/4/7) | 暖かい |
| 推し度 ★★ | 技術:標準 | 曲作り:標準 |
▶1楽章 冒頭
有名な2楽章「アンダンテ・カンタービレ」は、ロシア民謡による夕暮れのような歌。
前半楽章はゆったり、後半楽章は民族舞曲風で楽しいです。
歌心のあるチームならぜひおすすめします。
その他
今回は紹介しませんでしたが、その他のおすすめの曲を載せておきます。
| その他、おすすめの弦楽四重奏曲(初結成時) | |
| ハイドン | 弦四39番『鳥』, 67番『ひばり』, 75番, 80番 |
| モーツァルト | 弦四21-23番『プロシャ王』 |
| ディッタースドルフ | 弦四6番 |
| スーク | 弦四1番 |
| ボロディン | 弦四2番 |
気になった曲はフル音源で聴き比べよう
記事内の音源は、著作権切れの古い録音の一部分だけです。
最終的に曲を決めるときは、フル音源で数曲を聴き比べるのがおすすめです。
今回紹介した17曲は、いずれもAmazon Music Unlimitedで聴けます。
名門カルテットの演奏で聴き比べると、「自分たちがやりたい曲」がはっきり見えてきます。
初めての方は30日間の無料体験で聴き比べが可能です(無料期間中に解約すれば料金はかかりません。期間終了後は有料更新となる点にご注意ください)。

楽譜を用意しよう
曲が決まったら、次は楽譜です。
弦楽四重奏の楽譜は出版社によって校訂の質が違うので、定番の原典版を選ぶと安心です。
| 作曲家別・定番の出版社 | |
| ハイドン | ヘンレ |
| ベートーヴェン | ヘンレ、またはベーレンライター |
| モーツァルト | ベーレンライター |

▼この記事の曲の楽譜はこちら(Amazonで購入できます)
ハイドン『エルデーディ四重奏曲集』パート譜(ヘンレ版)
『騎士』『五度』『皇帝』『日の出』を収録
モーツァルト『ハイドンセット』ほか10曲セット パート譜(ベーレンライター版)
『春』『狩』『不協和音』を収録
ベートーヴェン 前期弦楽四重奏曲集(1〜6番)パート譜(ヘンレ版)
同・ベーレンライター版
まとめ
- 調性がシンプルで、役割が分かりやすく、全パートにやりがいのある曲を選ぶ
- 迷ったら『皇帝』・ベートーヴェン4番・『アメリカ』の3曲が鉄板
- 決める前に、フル音源での聴き比べがおすすめ
初結成におすすめの弦楽四重奏曲17選を紹介しました。
あくまでも、室内楽はやりたい曲をやるのが一番です。
そのうえで迷ったときは、この記事の曲から始めてみてはいかがでしょうか!
