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【傑作解説】メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第5番|色彩豊かな最高傑作

豊かな世界観、艶やかな色彩——

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第5番は、
彼の中後期の集大成ともいえる作品です。

彼の作品の中では知名度が控えめですが、
実は彼が「自身の最高傑作」と評したほどなのです!

筆者
実際の演奏でもさまざまな名場面が味わえる名曲です!

機会があればぜひ味わっていただきたい一曲。
この記事では、バイオリン歴35年以上の筆者が、
弦楽四重奏曲第5番の聴きどころ魅力を演奏者目線で解説します。

  • 弦楽四重奏曲第5番の作曲背景
  • メンデルスゾーン中期作品の魅力
  • 各楽章の聴きどころと楽しさ

人生の充実期に作られた曲

本曲が作られたのは1837年、メンデルスゾーンが28歳のときでした。

彼の生涯はわずか38年と短命でしたが、この20代はまさに創作のピーク
前年には敬愛する妻セシルと結婚し、公私ともに満たされていた時期です。

この時期、メンデルスゾーンは作曲だけでなく、指揮者・音楽監督としても活躍していました。
拠点としたライプツィヒでは、彼の主導で「聖パウロ」が成功を収め、
ベートーヴェンの「第九」を感動的な演奏で再評価させるなど、音楽界での影響力を大きく広げていました。

多忙を極めながらも創作意欲は衰えず、作品にはその活力が刻まれているのです。

メンデルスゾーンの「最高傑作」

この時期、メンデルスゾーンは短期間で第3~5番までの弦楽四重奏曲を書き上げました。

3曲はいずれも個性が異なり、作風の幅広さを感じさせる仕上がり。
メンデルスゾーンがこのジャンルに並々ならぬ情熱を注いでいた証でもあります。

なかでも本曲…第5番は、彼自身が「最高傑作」と評するほどでした。

筆者
流線的な16分音符、分散和音、情熱的なメロディーなど…
彼ならではの、香り高く旋律的な味わいがとても魅力的です!

ちなみに、彼の弦楽四重奏曲で有名なのは第1,2番といった初期作
しかしこれらは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲など、ほかの作曲家を研究して引用したものが多かったのです。

本曲の時期になると、彼独自の作風が見えるようになり、
一層の奥深さが楽しめる曲となっているのです!

  • 華やかな充実期に作られた3曲の中期四重奏曲たち
  • 第5番は、彼自身が「最高傑作」と評した名曲
  • 初期作品とちがい、彼独自の作風が見えるようになった時期

各楽章の聴きどころを紹介!

第1楽章|Allegro vivace

古い音源なので聴きづらいかもしれません!(以下同様)

流麗な16分音符のモチーフに乗って、Es-durのメロディーが颯爽と現れます。

この楽章の特徴は、この16分音符とともに奏でられる上昇音型の数々
深い調性ながらも、前向きな活気が感じられます。

また、弱拍から始まるフレーズが多いのも特徴。
伴奏も弱拍から放たれることが多く、メロディーラインの自由さを損なわないように注意が必要です。

筆者
「拍を固める」「自由にさせる」音など、奏者も考えることが多いです!

第2楽章|Scherzo

メンデルスゾーン十八番のスケルツォ楽章

妖精が囁くような音楽です。

pで奏でられるスタッカートの連続は、人によって
「かわいい」「妖しい」とさまざまに感じるでしょう。

第3楽章|Adagio non troppo

黄昏時のような哀愁を醸し出す緩徐楽章。

As-durというさらに深くなった調性が、聴き手を数多の想像にいざないます。

所々に現れる半音のうつろいも素敵。
にじむような雰囲気を見せてくれます。

第4楽章|Molto Allegro con fuoco

分散和音を中心とした、活気あふれる終楽章

1stVnの技巧に注目です!

筆者
弾いてみると分かりますが、とんでもなく忙しいです笑

アルペジオによる上昇音型がこれでもかというほど出てきます。
転調も多く、さまざまな色彩が魅力の音楽です!

まとめ|短くも印象に残る標題音楽の名作

弦楽四重奏曲第5番は、彼の四重奏曲6曲の中でもとりわけ高い完成度を誇ります。

とてもカラフルな雰囲気が魅力の一曲。

演奏機会は少ないですが、機会があればぜひその芳醇さを味わってください。

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