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【演奏の核心】テンポの決め方と揺らし方|自然な速さはどう選ぶ?

演奏するうえで、「テンポをどう決めるか」「どこまで揺らすか」は永遠の課題です。
一見、機械的に決められそうでも、テンポは私たちの鼓動や感情と深く結びついています。

筆者
テンポの感覚が合ってると、音楽に自然に乗れるんですよね!

年齢や経験によって、自然に感じる速さも変わってきます。
さらに、ソロと室内楽では、テンポの“落とし所”がまったく違うこともあります。

テンポ指定が書かれている曲でも、表現を追求するなら「自分たちに合った速さ」を探すことが大切です。

本記事では、テンポ感の変化や決め方、テンポルバートの使い方まで、
表現力を高めたい演奏者に向けて、実践的な考えをご紹介します。

 
筆者
本記事は、プロに教わったことや読んできた本、自分の体験談をベースに書いています!
  • テンポの感じ方が年齢や経験によってどう変化するのか
  • ソロとアンサンブルで「自然に感じる速さ」がなぜ違うのか
  • テンポ指定やテンポルバートをどう“自分の音楽”に活かすか

テンポは脈拍と感性で”揺らぐ”もの

テンポは、感情や身体の状態と一緒に“揺らぐ”ものです。

テンポは「BPMいくつ」と機械的に測れるものと思われがちです。
しかし本来、テンポは人間の脈拍や呼吸と密接に関係しています。

 
筆者
もともとは“気持ちよく呼吸できる速さ”でテンポを決めていたとも言われます!

したがって、年齢やそのときの体調で「ちょうどいいテンポ」は変わるのが普通です。
若いころは速めに感じたテンポが、年齢とともに“せわしなく”感じられることもあります。

筆者
昔録った演奏を聴き返すと「速っ!」ってなること、あります(笑)

また、同じ曲でも、朝と夜、練習の序盤と本番直前では、自然と感じる速さが違ってくることもあります。

テンポは感情や身体の状態と一緒に“変わる”ものだと考えると、演奏の自由度もぐっと広がります。

テンポは元来、揺らぐもの――
これを念頭に置いて、さらに踏み込んでいきましょう。

曲のテンポ|主題の性格と細部の聞こえやすさがカギ

曲のテンポを決めるうえで、まず大切なのは「主題の性格」です。
軽やかな旋律なのか、堂々とした主題なのかによって、自然と合うテンポが変わってきます。

 
筆者
速度指示がなくても、楽譜に書かれたニュアンスが実はテンポに直結しているのです!

また、「音の細部まで聴き取れるかどうか」も、重要な判断基準になります。
テンポが速すぎると細かい音符がつぶれたり、逆に遅すぎると流れが止まってしまうことも。

特に重要なパッセージでは、テンポをほんの少し抑えることで、聴き手に伝わる密度が一気に増すことがあります。

補足として、演奏するホールの残響も関わってきます。

 
筆者
「残響の多いホールはテンポを遅くしよう」という定石――
これは、”音の細部を聴かせる”という前提で生まれた考えです!

アンサンブルのテンポ|4人の感覚のバランスで決まる

テンポ感は、自分ひとりで弾くときと、アンサンブルで弾くときとでは大きく変わります。
特に室内楽では、4人いれば4通りのテンポ感があるのが普通です。

カルテットなどで「自然なテンポ」を決めるには、お互いの呼吸や音の“重なり方”に耳を澄ますことが大切です。
誰かひとりの速さを正解にするのではなく、全員が「これだ」と感じるテンポを探る必要があります。

 
筆者
4人の感覚のバランスが「その団体のテンポ」になるのです!

作曲家のテンポ指定とテンポルバート

作曲家のテンポ指定は“絶対値”ではない

楽譜にテンポの数字が書かれていると、それを“正解”として受け取りたくなります。
けれど実際には、その数字どおりに弾くとしっくりこないことも多いものです。

筆者
ベートーヴェンの指定って、えっそこまで速いの?って思うことありますよね(笑)

特にベートーヴェンの場合、使っていたメトロノーム自体が不正確だったという説もあります。
つまり、テンポ指定は「作曲家の意図を知る手がかり」ではあっても、「守るべき絶対値」ではないのです。

大切なのは前述のように、曲のキャラクターや細部からテンポを考え、
その上でテンポ指定を“参考値”として取り入れる姿勢です。

時代によって汲み取る”テンポルバート”

19世紀前半までの作品では、テンポルバート(自由さ)が楽譜に書かれていないことが多いです。
だからといって、最初から最後まで全く揺れのない演奏では、音楽が平板になってしまいます。

チェリストのカレル・サードロはこう語っています。

「ベートーヴェンは曲中にテンポルバートを書かなかったが、だからといって無機質にインテンポで弾いていたわけではない。
書かれていなくても、そこには微妙なテンポの幅がある。
それを読み取る必要がある」

一方、ヤナーチェクやスメタナなどの作曲家は、テンポの変化を細かく書き残しています。
彼らの楽譜にあるテンポ指示は、ただの“速度の変化”ではなく、「こう聴いてほしい」というメッセージです。

こうした指示を忠実に活かすことで、音楽の意味やニュアンスがより深く伝わります。

まとめ|テンポ選びは“感性と理解”のバランス

  • テンポは脈拍や感情とつながる“身体的な感覚”でもある
  • 主題の性格や細部の聞こえ方から、最適な速さを見つける
  • 団体のテンポは、全員の感覚の”バランス”で決まる

テンポは単なる数字ではなく、音楽の“呼吸”そのものです。
だからこそ、自分の感覚や年齢、演奏スタイルによって自然に変化していくものでもあります。

特にアンサンブルでは、4人の感性が交わるところにこそ、その団体の“ちょうどいいテンポ”が生まれます。
そして作曲家のテンポ指定も、絶対ではなく「ヒント」として向き合うのが理想です。

 
筆者
作品へのふさわしさ & 今の自分に自然な速さ。それが“いいテンポ”だと思っています。

大切なのは、伝統や表現を無視せず、楽譜と感性のあいだでバランスをとること。
テンポは流行に左右されるものではなく、音楽そのものへの理解から生まれるものです。

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