この記事では、バイオリン歴35年以上の筆者が、チャイコフスキー「イタリア奇想曲」を紹介します。
この曲は、彼がイタリアでの保養中に書かれた作品です。
イタリアの旋律がふんだんに使われているのが特徴。
万華鏡のように明るい色彩を持つ、16分ほどの曲です!

この記事を読むと、イタリア奇想曲の作曲背景や、聴きどころがわかります。
簡単なまとめ
- イタリアの風土に魅了されて作った曲
- 大きく5部からなり、たくさんの民謡旋律が展開
- 実はバイオリンにとっては結構弾きやすい!
チャイコフスキーの人物像


人物像…ロマン派ピークの作曲家
チャイコフスキーは、1840~93年に活躍しました。
ロマン派の最盛期…オーケストラ曲はもちろん、オペラやバレエなどの名作も生み出しました。
性格は内向的。
ただし、いきなり激情的になることもあったそうです。
彼自身、さまざまなコンプレックスの持ち主だと自覚していたとのこと。
このコンプレックスの原因は色々あります。
作曲家として遅咲きだったことや、性的マイノリティ…同性愛者だったことも一因でしょう。
作風…西欧由来のがっしりさ + 抒情的なメロディー


チャイコフスキーはロシアの作曲家ですが、作風はとても西欧的でがっしりした構築です。
幼少期から西欧音楽に触れ、また、大学院でも西欧をよく勉強していたからです。
一方、地元のロシア民謡を取り入れるなど、抒情的なメロディーも魅力です。
メランコリックともいえる旋律がまた素敵ですね。
とてもドラマチックな音楽となっています!
作曲背景

イタリアの風土に魅了された
イタリア奇想曲は、1880年…40歳で作られました。
時期的には、中期作品。交響曲第4番の後です。
この曲はその名のとおり、イタリア旅行中に書かれました。
彼は、イタリアを大変気に入っていました。
はじめは、離婚による精神的ショックから立ち直るための保養旅行で訪れました。
そして、風光明媚なイタリアに心を奪われたのです。

イタリアの風土に心癒された彼は、翌年も年末年始にかけて滞在しました。
イタリア奇想曲は、このタイミングで作られました。
彼はその後もたびたびイタリアを訪れ…
のべ36ヶ月も滞在したのです。
彼のパトロン、フォン・メック夫人への手紙には、イタリアの風土・文化・芸術に魅了され、多大な感銘を受けたことが書かれています。
たとえば、ダビデ像の大きさ。
田園のある愛らしいフィレンツェの風景。
見るものがあまりにも多いローマ。
さまざまなものに目を奪われたことが分かります!

もしかしたらお気に入りの国だったのかもしれません!
フォン・メック夫人への手紙

イタリア奇想曲は、滞在中の4か月間で大枠が完成しました。
フォン・メック夫人への手紙のひとつに、この曲について書かれています。
「私は数日前から、民謡の旋律を基にして『イタリア奇想曲』のスケッチを書き始めました。
民謡集から選んだり、また、路上で耳にした旋律から選んだり…
どれも素晴らしいもので、良い作品ができるでしょう」
実はこの曲の原題は「民謡旋律によるイタリア組曲」なのです。
彼がどれほどイタリアに影響されたかが分かりますね!
本曲は、帰国後の1ヶ月で完成しました。
曲の特徴
チャイコフスキーの他の作品と比べて明るい雰囲気をもっています。
陽気な民謡旋律が、万華鏡のように展開します!
大きく5つのパートから成っています。
- ファンファーレ→民謡風の導入部
- 名人芸的なDes dur
- タランテラ
- 民謡の力強い再奏
- 熱狂的なコーダ
第一部 ファンファーレ→民謡風の導入部


↑古い音源なので聴きづらいかもしれません!(以下同様)
金管の景気のいいファンファーレから始まります。
彼の宿泊地のすぐそばのイタリア騎兵隊の宿舎から、毎夕響き渡ったファンファーレです。
↑ファンファーレの後は、「金管の3連符+弦のエレジー」が続きます。
リズミックでありながら、重厚さが付加されています。
↑しばらくすると、木管による民謡旋律が現れます。
イタリア民謡集の「美しい娘さん」と呼ばれる歌です。
南国情緒豊かです!
第二部 名人芸的なDes dur

リズミックな伴奏によって、踊るような名人芸が奏でられます。
まるで祭りのような明るさですね!

(筆者は大体1-4で逃げます…)
第三部 タランテラ

民族舞踊のタランテラです。
弾いていて楽しく、また、第二部に続いて各楽器の技術的見せ場でもあります!
しだいにタンバリン、シンバル、大太鼓などが加わり、全体的な重量感も増していきます。
第四部 民謡の力強い再奏

最初の「美しい娘さん」の民謡が力強く奏でられます。
とてもスケールが大きくのびのびとした部分です!

もう文字面からして盛大ですね笑
第五部 熱狂的なコーダ

これまでのイタリアの旋律が次々に現れます。
打楽器群が鮮やかな色彩を出し、最後はプレスティッシモの熱狂的な高まりで曲を終えます。
開放的なイタリアの気分が終始満ち溢れています!
バイオリン弾きの視点
※アマチュアの人が休日や部活動で弾くことを想定しています。
実は意外と取っつきやすい曲です!
要所要所では名人芸的な部分もありますが、全体としては無理のない難易度です。
特に2ndは音域的にめちゃくちゃ弾きやすいですね!
(管はよく吹けたなって思いますが…笑)
総括すると、華やかで弾きやすい曲です!
まとめ
- イタリアの風土に魅了されて作った曲
- 大きく5部からなり、たくさんの民謡旋律が展開
- 実はバイオリンにとっては結構弾きやすい!
イタリア奇想曲は、この時期のチャイコフスキーでは群を抜いて明るい曲です。
彼は、性的マイノリティによる悩みや、創作上のストレスを多く抱えていました。
そのため、交響曲第4番のようにシリアスな曲が多かったのです。
ですので、この曲には、彼が生涯をとおして追い求めた自由の象徴が暗示されているのかもしれませんね。