音空間に優しく広がる、甘い響き!
Ti(ティーアイ)は、近年までヨーロッパにしか流通していなかった、隠れたバイオリン弦です。
モダンな弦ではめずらしく、柔らかく広がるような鳴りが特徴的。
特に、オーケストラや室内楽で「空間を充実させる音」を求める人にうってつけの弦です!
さらにコストパフォーマンスも優秀。
これだけのクオリティなのにお財布にも優しい弦です。
特に内声奏者の方向け!
この記事では、バイオリン歴35年以上・コンクール歴ありの筆者が、
- Tiの音色・反応性・演奏感
- 他の弦(エヴァ・ドミナントなど)との違い
- どんな奏者・シーンに向いているか
…を、実使用の視点から丁寧にレビューします。
Tiはどんな音色?
やや甘く、柔らかく広がる音

Tiの魅力は、その柔らかさ。
少し風合いのある音質とあいまって、空間に柔らかく広がる音です。
ピントはそんなに強くなく、全体の響きを増してくれるような充実感があります。
また、もうひとつの魅力はやや甘くて明るい音。
「広がり系」の弦自体はたくさんありますが、Tiのように甘く開放的な音は非常にめずらしいです。
ドミナントの発展形
Tiは、ドミナントの柔らかさをグレードアップさせた弦です。
実際に弾いた感想としても、ドミナントの柔らかさやまろやかさを受け継がれていると感じます。
(なお、ドミナントの金属成分のような音は感じないのでご安心ください)

実際の使用感!
オケ・室内楽…特に内声にピッタリの弦!
Tiはそのほど良い柔らかさから、周りの音色によくブレンドして弾きやすいです。
オケ、室内楽でのアンサンブルには最適。
特に、内声で作るハーモニーのように、良い意味でのピントの緩さが求められる場面で活躍します!
最初はよく弾き込むべし
張ってから数日は「ビィン」と芯の残ったような音が出ます。(ドミナントのような金属音ではないです)
別に目立つ音ではないので、練習には持っていけます。
ただしこの状態だと、Ti本来の魅力をあまり感じられません。
数日すれば甘い音に変化します。
Tiでの本番を見据えるなら、余裕をもって張り替えることをおすすめします!
ていねいに音を作りたい人に最適
総合的に、Tiはパワー・ハリで押すような弦ではありません。
堅実に、ていねいに音を作る人に最適です。
逆に、パワフルな音がほしい人は、兄弟弦の「ロンド」がおすすめです!
ロンドはピーターインフェルドをベースとし、Tiはドミナントをベースとして同時に作られた弦です。
この2つは「LUTHIER LINE」といって、もともと海外の弦楽器工房のみに販売されていました。
しかし、新型コロナウイルスがきっかけで、これらのネット販売が解禁されたのです。
- やや甘く、柔らかい音!
- オケや室内楽、サロンコンサートなどに最適!
- ていねいに音をつくりたい人に向いている!
Tiのコスパ・寿命|とてもお財布に優しい!
| 寿命 | 4~5か月(1日1時間程度の使用) |
| 価格 | 約10,000円(2025年10月時点) |

Tiとほかの弦を比べてみた!
オブリガートとの違い
内声向きの弦として有名なオブリガート。
実は、オブリガートとTiはともに内声向きなものの、性質は対照的です。
オブリガートは、音色が暖かいながらも芯のある音が魅力。
太く通ったピントのおかげで音が分かりやすく、また万人にとって弾きやすいです!
Tiは、やや明るく甘い音、かつ、緩めのピントが魅力。
緩いぶん、弦の「引っ掛かり」に余裕があり、発音の引出しがより多彩です!
(そのぶん、やや慣れを要します!)
ロンドとの違い
兄弟弦のロンドは、とてもパワフル。
華やかで説得力があり、張った音が出ます。
リサイタルやメロディーラインを担当するのにうってつけの弦です!
一方でTiは、広がる系。
音空間を充実させ、豊満な響きを生み出すのが得意。
ハーモニーを支えたり、いろいろな温度の音を出したい人に最適です!

こんなん誰が気づくんだ笑
まとめ|Tiは響きを充実させたい人におすすめ!
- 柔らかい音を作りたい!
- 堅実・ていねいに音を作りたい
- 普段から内声を弾いている
- ランニングコストのよさを求める!
Tiは、柔らかい音で人々を魅了する、隠れた名弦です。
少し慣れは要しますが、内声好きの方や、オーケストラ・室内楽奏者の方にぜひ広まってほしい弦だと思います!
「あまり聞いたことないけど大丈夫かな?」という人も、
海外ではより使われていますし、何よりたくさんの音色で弾くのは豊かな経験になると思います。
ぜひ一度試してみてください!


