- 新しい弦を試したいけど、最近の弦はハリのあるものばかりだなあ・・・
- 落ち着いた味わいで、操作性も良い弦はないかな?
Tiは、最近のバイオリン弦のなかでは柔らかく、特にオーケストラ・室内楽奏者におすすめです。
この記事では、バイオリン歴35年以上・コンクール歴ありの筆者が、Tiの音色、操作性、コストパフォーマンスなどを紹介・レビューします。
この記事を読むと、Tiのどういった点が魅力なのか、どのようなプレイヤーにおすすめなのかが分かります。
Tiの簡単な長所・短所まとめ
- 明るくて甘い音
- 張力が標準的で、押さえやすい
- 内声向きの弦のなかでは、パワーがあるほう
- ランニングコストが安い
- 張ったあと、馴染むまでにやや時間がかかる
- 一般の店頭だとあまり売られていない
Tiのコンセプト…もともと一部の弦楽器工房のみに提供されていた特殊な弦
Tiは、老舗メーカー、トマスティーク社が開発した弦です。
弦としての歴史はかなり新しく、市場に出回るようになったのも最近です。
また、Tiと同じように作られた兄弟弦として「ロンド」があります。
いったい誰が気づくんだろう・・・笑
Tiのコンセプトは次の2つです。
Tiとロンドは、「LUTHIER LINE」…リュータイラインといって、もともと海外の一部の弦楽器工房向けのみに販売されていました。
2021年以降の新型コロナウイルスがきっかけで、トマスティーク社はTi・ロンドのインターネット販売を解禁しました。
現在、ネット販売であれば一般でも入手できるようになっています。
実際に弾いた感想としても、ドミナントの柔らかさやまろやかさを受け継がれていると感じます。
(なお、ドミナントの金属成分のような音は感じないのでご安心を)
こちらはコンクールやリサイタル向けの非常にパワフルな作りです。
柔らかい音が好きならTiがおすすめです!
逆に、ソロの出番が多いなら、ロンドの方が映えがあって弾きやすいと感じますね!
音色…やや明るく、甘い音
Tiの音色は、上の画像のような特徴です。
- やや明るく甘い
まろやかで甘い音です。
開放的です。少し明るめ。柔らかい弦にしては珍しいと思われます。 - やや芳醇な質感
風合いのある音です。テクスチャーを感じるといったほうが分かりやすいでしょうか。
トマスティーク社の弦は全体的にこういったものが多いです。 - 広がりのある音
ピントはそんなに強くありません。
空間にじんわり広がるような音がします。
兄弟弦のロンドとは対照的です。
総合的に、Tiはパワー・ハリで押すような弦ではありません。
堅実に、ていねいに音を作る人に最適です。サロンコンサートの規模にも向いています。
また、内声には特に向いています。
逆に、ハリを求める人・クリアな輪郭がほしい人にはちょっと向かないと思います。
張力(音量、操作性)…標準的
Tiの張力は全体として標準的です。しいて言えばG線が少し強め。
操作性は良好です。
さすがにエヴァピラやロンドと比べると発音に準備を要しますが、普通のコンチェルトやオーケストラ曲を弾く分には全然問題ありません。
コスパ(値段、寿命)…とても優秀
- 本番で使うなら ⇒ 3か月程度
- 練習するだけ ⇒ 3~5か月程度
※現在の筆者の演奏時間は、平日30~1時間程度、休日1~3時間程度です。
もっと弾く方や、音大生、プロの方はこれより短くなると思います。
値段:2024.5時点で8,000-10,000円前後
(円高の影響もあり高めです)
ランニングコストはとても優秀です。
一方、兄弟弦のロンドは15,000円前後と高いです。やはりソロ向きの弦のほうが注目される分、人気があるのかなと思います。
その他長所、短所
▲弦が馴染むまでにやや時間を要する
張ってから数日は「ビィン」と芯の残ったような音が出ます。(ドミナントのような金属音ではないです)
別に目立つ音ではないので、練習には持っていけます。
ただしこの状態だと、Ti本来の魅力である甘い音をあまり感じられません。
Tiでの本番を見据えるなら、1~2週間はしっかり弾きこむことをおすすめします。
まとめ
- 堅実・ていねいな音作りをする人
- 内声
- 室内楽やサロンコンサート向けの音色を目指す人
- ランニングコストのよさを求める人
Tiは、とてもポテンシャルの高い弦なのに、全然話題にされなくてもったいないなと思っています。
理由として、ネットで出回る意見はどうしてもソリスト向けの情報が多いため、Tiのような柔らかい弦は目立ちにくい傾向にあるからです。
私のように内声好きの人間や、オーケストラ・室内楽奏者の方にこそもっと使っていただきたい弦です。
ぜひ一度試してみてください!