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【若き情熱の名作!】ブラームス/弦楽六重奏曲第1番 解説

今回は、ドイツ名作曲家の一角、ブラームスの室内楽を紹介します。

弦楽六重奏曲第1番は、彼の作品の中でも特にのびのびとして聴きやすいです!

その裏で、ブラームスは演奏難度の高い作曲家ですが…
本曲はわりと平明で親しみやすく、演奏者としてもおすすめです!

筆者
六重奏の充実した響きを楽しみたいなら、ぜひおすすめです!

この記事では、バイオリン歴35年以上・海外学生コンクール入賞歴ありの筆者が、弦楽六重奏曲第1番の魅力やバックストーリーをお伝えします。

簡単なまとめ

  • 若かりし情熱と、豊かな経験を味わえる名曲
  • 弦楽六重奏の魅力を確立させた作品
  • ブラームスの室内楽では最も親しみやすい!

ブラームスの人物像

19世紀・ドイツ出身

ブラームスは、1833-1897年に活躍しました。
ロマン派のピークです。

出身地はドイツのハンブルク
彼の家はとても貧乏で、近所では人身売買や女郎買いが行われるほどでした。
彼自身も、夜に大衆酒場やダンスホールでピアノを弾いて稼いでいました。

筆者
飲みのBGMでブラームスの演奏…
大衆酒場の人々がうらやましい限りですね笑

音楽教育は、主にコントラバス奏者の父から受けました。
のちにシューマン夫妻と出会い、彼らにも大きく感化されました。
特に奥方のクララとは友情を超えた関係で、一時は恋愛感情も抱いてしまったほどです。
シューマンが精神病で亡くなってからも、ブラームスはクララを支え続けました。

引っ込み思案

彼は極度の引っ込み思案で、スケッチや未完成の作品をことごとく破棄しました。

また、シューマンに音楽誌上で絶賛されたときも、
「とてもありがたい反面、期待に応えられるか不安です」と返したほどです。
(この絶賛により、彼の名声は一気に広まりました)

そのため、彼の若いときの作品はほとんど残っていません。
現在有名な、交響曲・カルテット・バイオリン協奏曲…いずれも40歳以降に完成しました。

そんな中で、本曲…弦楽六重奏曲第1番は、27歳。
若かりし彼のレアな作品
なのです。

弦楽六重奏曲第1番の作曲背景

弦楽六重奏のスタイルを確立させた曲

引っ込み思案のブラームスは、なぜ27歳でこの曲を世に送り出せたのか?

それは、弦楽六重奏曲に先例が少なく、彼が自由に作曲できたからと言われています。

当時、弦楽六重奏はひじょうに画期的でした。(1700年代のボッケリーニ以来、極めて少ないです)
一方で、その響きはとても魅力的…
四重奏に比べてビオラ・チェロが多く、中低音の充実した響きと幅が楽しめます。

これがブラームスの、重厚で和声を重視する作風にマッチしたのです。

この弦楽六重奏曲は、のちの彼の交響曲の足がかりにもなりました。
また彼自身も本曲の完成に自信を抱きました。
本曲の美しい2楽章をピアノ用に編曲し、クララの誕生日にプレゼントした逸話もあります。

本曲は、のちのブラームスの名曲のきっかけともなった作品なのです。

嵐が過ぎ去り、やや落ち着いた時期の曲

この頃は、ブラームスに起こる嵐のようなイベントが過ぎ去り、やや落ち着いた時期でした。

何よりも、シューマンから受けた啓蒙と彼の死。
そして、クララへの想いの決着。
これらのイベントを乗り越えて、精神的にも成熟した時期です。

また、金銭面でもようやく余裕ができました。
彼はデトモルトという宮廷に就職。契約期間は毎年3ヶ月でしたが1年分の給料を賄えました。
勤務時間外は創作活動に専念できました。

弦楽六重奏曲第1番はこうした中で出版されたのです。

曲の特徴

特徴は、(前述のとおり)中低音の充実な響きが全体を支えていること。

そして、変奏・動機の変形が多いことです。

ブラームスは、変奏曲の作曲に関して強い関心と意義を見出していました。
動機の変形・展開は、古典的な作曲技法の核心でもあるのです。

 
筆者
同世代の作曲家のなかでも、ブラームスは古典の形式美をいっそう追求しました!

第1楽章

↑古い録音のため聴きづらいかもしれません!(以下同様)

穏やか、しかし情熱的な楽章です。

この楽章は、中低音と高音のメリハリが付いており、ひじょうに聴きやすいです。
提示部は、中低音の柔らかい響きが魅力。
展開部からは、盛り上がりとともに音域も広くなります。

また、裏で波打つような8分音符も特徴的です。
このうねうねした8分は、のちの第2番にも使われます。

筆者
ちなみにこの8分、雰囲気に沿って弾くのがけっこう難しいです…笑

第2楽章

激情的な楽章。
この楽章は、主題と6つの変奏曲で構成されています。

ビオラから始まる、独白のごとき主題が有名です。
この主題ですが、4度→6度→8度と広がりを増していき、
感情の昂ぶりがダイレクトに感じられます。

第3楽章

まるで色づいた森を思わせるよう。
とても軽快で充実した楽章
です。

随所に現れる3拍目のアクセントがスパイスとなっています。

また、トリオはさらに活動的になります。
響きを増しながら躍動するさまは、まさに弦楽交響曲ともいえます。

第4楽章

牧歌的で心が惹かれる最終楽章。

しかし、中盤、後半には感情の高まりも現れます。

1楽章と同じく、内声の波に乗ってチェロ・バイオリンが歌い上げるさまが素敵です。

バイオリン弾きの視点

アマチュアの人が休日や部活動で弾くことを想定しています。

ブラームスの室内楽では一番弾きやすいと思います!
ロマンチックで旋律を聴かせやすいからです。

また、演奏会としても取り扱いやすい曲です。
低音の重厚感を味わえながらも、そこまで重すぎないためです。

ただ、ビオラの2楽章は界隈で有名すぎて、弾くのに勇気がいります。
ビオラの意向を確認しましょう…笑

総括すると、彼らしい響きの豊かさと、旋律的な弾きやすさのバランスが取れた名曲です!

六重奏ができる機会があればぜひチャレンジしてみてください。

まとめ

  • 若かりし情熱と、豊かな経験を味わえる名曲
  • 弦楽六重奏の魅力を確立させた作品
  • ブラームスの室内楽では最も親しみやすい!

ブラームスの弦楽六重奏曲第1番を紹介しました。

六重奏の充実した響きを楽しみたいなら一番におすすめします!

聴くのはもちろん、6人集まれば奏者としても、ぜひ楽しんでください!