バイオリン弦・肩当て、室内楽曲、オーケストラ曲の紹介・解説をしています。興味があればご覧ください!

【晩年の自由を謳歌した作品】ハイドン/弦楽四重奏曲第78番「日の出」解説

今回は、ハイドン晩年の弦楽四重奏曲「日の出」を紹介します。

「日の出」は、冒頭…
朝霧のなかを、日が立ち昇るようなメロディーで有名です。

↑古い録音のため聴きづらいかもしれません!

全体的には、優雅。そして少し余裕のある曲調

明るくて、ちょっと温かい気分になりたいときにピッタリの曲です!

この記事では、バイオリン歴35年以上・海外コンクール出場歴ありの筆者が、「日の出」のバックストーリーや魅力を解説します。

 
筆者
実は、演奏者としても全パート楽しくておすすめです!
スポンサーリンク

簡単なまとめ

  • 晩年…貴族の束縛から解放された後の作品
  • 暖かくて気風のよい音楽
  • 冒頭の1stだけでなく、全パート充実して楽しい

ハイドンの人物像

人物像

ハイドンは、17世紀に活躍した「古典派」の作曲家です。

生涯 77歳で、当時としてはかなり長命。
60歳を過ぎてからも元気に作曲を続けていました。

出身はオーストリア

幼少期は聖歌隊に所属し、青年期以後は主に「エステルハージ家」という貴族に仕えながら音楽活動を行いました。

「日の出」は、晩年でエステルハージ家から解放された後の作品です。

古典派の作曲スタイルの確立

ハイドンは、クラシック音楽の「骨組み」を確立した人物です。

交響曲では、ベースとなる4楽章制を定着させ、各楽章の役割を明確にしました。

弦楽四重奏曲では、4つの楽器を対等に対話させるスタイルで、室内楽の新しい地平を開いたのです。

また彼は、とても大人かつ忍耐強い性格で、後輩からは 「パパ・ハイドン」とも呼ばれました。

そして現在でも、「交響曲の父・弦楽四重奏曲の父」と尊敬の念を込めて呼ばれているのです。

「日の出」の作曲背景

エステルハージ宮廷楽長からの解放

晩年のハイドンは、エステルハージ侯爵が世襲で代わったことをきっかけに、宮廷楽長の責務から解放されました。

新しい侯爵は、音楽にさほど興味がなかったのです。
そのため、ハイドンに終身年金を渡して自由にさせたのです。

解放されたハイドンは、ウィーンで音楽家と交流し、2度ものイギリス旅行を重ねて、さまざまな経験を積みました。

「日の出」は、これらの経験を積んで円熟した彼が、人生の終盤に書いた作品です。

筆者
「日の出」と同じ頃の終盤作品として、「ラルゴ」も有名です!

ミサ曲・教会音楽の取り組み

この頃のハイドンは宗教的なジャンルに集中して取り組んでいました。

具体的には、ミサ曲や、オラトリオ「四季」に取り組みました。

理由は、以前エステルハージ家に仕えていたときに、このジャンルの作曲が阻害されていたからです。
(前代の宮廷楽長が専売特許として取り掛かっていたのが大きいです)

また、ハイドンは祈りの音楽として毎日ピアノを弾いていました。

「日の出」や「ラルゴ」の緩徐楽章に、甘美なアリア風ではなくて教会を思わせる内省的な旋律があるのは、こうした影響かもしれません。

曲の特徴

日の出という命名が誰のものか分からないが、曲の性格を見事に捉えています。
※ハイドンの命名ではありません

B-dur(変ロ長調)という暖かい日差しのような調性

優雅なテンポ感

そして晩年のハイドンが成せる、4つの楽器のコミュニケーションの深さが魅力です。

第1楽章

↑古い録音のため聴きづらいかもしれません!(以下同様)

穏やかな海を思わせる下三声の和音の上を、柔らかな1stの旋律が立ち昇っていきます。

「まぶしい!明るい!」だけではなく、朝日の霧を思わせるマイルドさが素敵です。

太陽が完全に姿を現したとき、木の葉がざわめき、すべてが目覚めます。

第2楽章

教会音楽のような、厳かな響きが特徴的です。

ミサ曲を作っていた影響があるのかもしれません。

Es-dur(変ホ長調)の響きが、祈り、幻想へと誘います。

第3楽章

伝統的なメヌエットです。

トリオが面白くて、ハンガリー風の民族性があると言われています。

第4楽章

優雅で、すこし遊ぶような雰囲気の最終楽章です。

“Allegro ma non troppo” … 「速すぎることなく」という指示によって、この曲全体を通した余裕につながっています。

“mezza voce” … 「柔らかい声で」という指示も特徴的です。
(「声量を落とす」という意味もありますが、この楽章においては違うかもしれません)

バイオリン弾きの視点

アマチュアの人が休日や部活動で弾くことを想定しています。

弾いていて楽しい曲です!

特に優雅な曲調が好きな人にはおすすめです。

また、各パート出番が多い!

冒頭の印象で1stだけ出番があると思われがちですが、全パート充実しています。

メロディーの受け渡しはもちろん、内声、ベースラインとしてもやりがい満点です。

 
筆者
ハイドンの曲は単純すぎると誤解されがちですが、
本当に誤解なのでぜひトライしていただきたい…!

難易度はやや抑えめ。さほど技術力がなくても弾けます。
しいて言えば、1楽章を余裕もって弾ける実力があると、なお楽しいと思います。

ちなみに、この曲が収められた「エルデーディ四重奏曲集」は、ほかにも魅力的な曲が揃っています。

堂々・明朗な曲が好きなら皇帝

短調に魅力を感じるなら「五度」

そして優雅な曲調が好きなら、この「日の出」「ラルゴ」を選ぶとよいと思います!

まとめ

  • 晩年…貴族の束縛から解放された後の作品
  • 暖かくて気風のよい音楽
  • 冒頭の1stだけでなく、全パート充実して楽しい

ハイドンの「日の出」を紹介しました。

彼の晩年は、魅力的な作品が本当に多いです。

どれも後味がすっきりしており、色とりどりの雰囲気が楽しめます。

「日の出」を好きになったらぜひ他の曲もトライしてください!

スポンサーリンク