普段あまりクラシックを聴かない方でも、慣れ親しんだ方でも、
耳にしただけで「おお、かっこいい!」と感じられる名曲がありますよね。
今回のテーマは、弦楽合奏曲!
この記事では、
どこかで耳にしたことのある定番の弦楽合奏曲から、知る人ぞ知るレアな名作まで、
「かっこいい弦楽合奏曲」を軸に厳選して紹介します。
バイオリンやヴィオラ、チェロが重なったときの、分厚くて艶のある響き。
あの音に、思わずシビれる方も多いはずです。
その中でも特に聴きごたえバツグンの曲たちをお楽しみください。

それでは、かっこいい弦楽合奏曲の世界を、一緒にのぞいてみましょう!
① バルトーク/弦楽のためのディヴェルティメント
<第1楽章>※古い音源につき、聴きづらさ等はご容赦おきください(以下同様)
<第3楽章>
まずご紹介するのは、20世紀の作曲家・バルトークの
《弦楽のためのディヴェルティメント》です。
一音目から感じるのは、荒々しく、野性味あふれるエネルギー!
独特のグルーヴ感に、思わず体が反応します。
特におすすめなのが、第3楽章。
疾走感の中で、合奏とソロが切れ味鋭い旋律を交わします!
この曲のかっこよさには、
大きく分けて二つのルーツがあります。
特徴1: 民族音楽をクラシックに昇華している!
一つ目のルーツは、民族音楽をクラシックに昇華していることです。
バルトークは、東ヨーロッパ各地の民族音楽を実地で研究し、
そのリズムや旋律を自作に取り入れました。
そのため、他の作曲家では味わえない独特のリズム感やイントネーションがたくさんあるのです。
音楽をぐいぐい前に引っ張っているんです!
特徴2: 「ディベルティメント」である!
二つ目のルーツは、この曲が「ディベルティメント」であることです。
軽快で親しみやすい器楽曲のことです!
バルトーク自身は20世紀の人物でしたが、
この作品ではあえてバロック~古典派の時代で流行った
「ディベルティメント」の書法を取り入れました。
その結果、迫力ある現代的サウンドでありながら、
意外なほどすっきりとしていて、耳なじみの良い音楽になっています。
まさに、現代人が求める「かっこよさ」を見事に形にした一曲です!
注:めっちゃ難しい(^^;)
ちなみにこの曲、
演奏する側から見ると難易度はかなり高めです。

リズム慣れしてないと大変なことになります(苦笑)
それでもなお挑戦したくなる!
この曲には、それだけの魅力が詰まっています。
② グリーグ/ホルベアの時代から
続いて紹介するのは、ノルウェーの作曲家・グリーグの
《ホルベアの時代から》です。
先ほどのバルトークとは対照的に、音楽は一気に明るく、爽やか。
背筋がすっと伸びるような、端正で気持ちのよいかっこよさがあります。
特徴1: 全5曲からなる組曲
この曲は、全5曲からなる組曲です。
第1・第3・第5曲は、テンポの速い舞曲風の音楽。
リズムが軽快で、思わず体が動きそうになります。
<第3曲>
<第5曲>
一方で、第2・第4曲は、落ち着いた雰囲気。
弦の透明感や、しっとりしたハーモニーが際立ちます。
「弦楽合奏って、こんなに軽やかなんだ」と感じられるはずです!
特徴2: ノルウェーの文豪ホルベアを讃えた曲!
曲名の「ホルベア」とは、
18世紀ノルウェーを代表する文豪、ルズヴィ・ホルベアのことです。
この作品は、彼の偉業を記念して書かれました。
グリーグはその際、ホルベアが生きた時代――バロック音楽の様式を意識しています。
そのため、音楽の構造は明快で、
無駄のない引き締まった響きになっているのです。
だから背筋が整うような端正さがあるのね!
自然に伝わってきますよね!
③ チャイコフスキー/弦楽セレナーデ
三曲目は、ロシアを代表する作曲家・チャイコフスキーの
《弦楽セレナーデ》です。
まさに「弦楽合奏」と聞いて、
多くの人が思い浮かべるイメージのど真ん中の曲です!
近年では、「オー人事」のCMや、
NHK交響楽団の番組オープニングなどで使われ、
耳にしたことのある方も多いかもしれません。
「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」って
感じがするわね!

特徴1: 実はモーツァルトへの敬意が込められている!
この曲、実は豪華でかっこいいだけではありません。
どこか透明感があり、音楽そのものがとても美しく感じられます。
この秘密は、チャイコフスキーのモーツァルトに対する敬意にあります。
チャイコフスキーが生きたのは、ロマン派と呼ばれる時代。
音楽がより大きく、より複雑へと進んでいった時期です。
しかしこの《弦楽セレナーデ》の頃、
彼はロマン派の派手な音楽に食傷気味になり、古典派の時代に立ち返っていったのです。
彼が特に強い敬意を抱いていたのが、モーツァルト。
「モーツァルティアーナ」という作品を書くほど、
モーツァルトを深く敬愛していました。
この弦楽セレナーデも、その精神を受け継ぎ、
無駄な装飾を抑えた、すっきりとした書法が使われているのです。
特徴2: 楽章ごとで表情が豊か!
この曲は、楽章ごとでさまざまな表情を見せます。
現在よく演奏される第1楽章は、堂々とした導入部から一気に引き込まれます。
第2楽章では優雅なワルツ。
第3楽章では深い哀愁を帯びたエレジーが続きます。
そして第4楽章では、何かが起こりそうな高揚感に満ちた音楽で、
実はロシア民謡が用いられています。
<第4楽章>
2楽章や3楽章も、今回の「かっこいい」という軸とは少し異なりますが、
作品全体を知るうえでは、ぜひ聴いてほしい名楽章です!
④ エルガー/序奏とアレグロ
<序奏>
<アレグロ>
続いて紹介するのは、イギリスを代表する作曲家・エルガーの
《序奏とアレグロ》です。
この曲のかっこよさは、知的で引き締まった響きにあります。
冒頭の序奏では、緊張感のあるダークな音色が広がり、
一気に聴き手の心を掴みます。
ウェールズ民謡を題材にしており、エルガーのイギリス的なルーツが音楽の随所に感じられます。
そこから始まるアレグロは、エルガー特有の、うねるようなエネルギーに満ちた音楽。
静と動の対比が、とても鮮やかです。
特徴: 高度な作曲技法による、立体的な響き!
この曲では、旋律が追いかけ合うフーガや、
複数の旋律を同時に重ねる対位法が効果的に使われています。
そのため、音楽が平面的にならず、
奥行きのある立体的な響きとして耳に届くのです。
さらにすごいところは、変奏曲風であること。
主題は何度も変奏され、そのたびに表情を変えながら、
音楽はどんどん厚みを増していきます。
<曲後半>
もう一つ注目したいのが、編成のユニークさです。
この曲では、弦楽合奏の中に、弦楽四重奏の独奏が組み込まれています。
つまり、弦楽合奏の5声部に四重奏の4声部が加わり、
合計9つの声部が絡み合います。

チャイコフスキーとはまた違う、知的でドラマチックな弦楽合奏。
エルガーの奥深さをぜひ味わってみてください!
⑤ 芥川也寸志/トリプティーク
さいごは、日本の作曲家から。
芥川也寸志の《トリプティーク》です。
「日本人作曲家の弦楽合奏?」
と、少し意外に感じる方もいるかもしれません。
しかし実は、日本にも優れた弦楽作品は数多くあります。
その中でもこの《トリプティーク》は、
とびきり鋭く、とびきりかっこいい一曲です!
音源は紹介できませんが、ぜひ聴いてみてください!
特徴: 切れ味のあるフレーズと、日本由来のリズム!
甘さや情緒に寄りかかることはなく、音楽は常に前へ前へと進んでいきます。
無駄を削ぎ落としたような音の運びが、強い緊張感を生み出します。
特に第3楽章は「祭囃子の太鼓のよう」とも表現される独特のビートが特徴。
作曲家本人も、「近所の神社から聞こえてきた御神楽から想を得た」とも語っています。
日本のクラシック音楽にも、ここまで硬派で刺激的な弦楽合奏があります。
ぜひ一度、実際に音で体験してみてください!
番外編|弦楽合奏版に編曲された、かっこいい名作たち
最後に番外編として、
もともとは室内楽曲として作られたものの、弦楽合奏としても演奏される名曲を2曲紹介します。
番外編① チャイコフスキー/フィレンツェの想い出(弦楽合奏版)
一つ目はチャイコフスキーの弦楽六重奏曲、
《フィレンツェの想い出》です。
この曲のかっこよさは、
止まることのない推進力と、非常にドラマチックな旋律にあります。
原曲は弦楽六重奏曲。
しかし六重奏としては異例なほどスケールが大きく、オーケストラ的な響きを持っています。
そのため、弦楽合奏として演奏されることもあるのです。
この作品の背景には、チャイコフスキー最大の支援者であった
フォン・メック夫人の存在があります。
病気でコンサートに行けなくなった彼女のため、
「自宅でもオーケストラのような響きを」という思いが込められていたとも言われています。
※真実は定かではありませんのでご注意ください。

機会があれば聴き比べてみてください!
ショスタコーヴィチ/弦楽四重奏曲第8番(弦楽合奏版)
二つ目は、ショスタコーヴィチの
弦楽四重奏曲第8番です。
原曲は弦楽四重奏ですが、
この作品には、作曲者自身の監修による弦楽合奏版も存在します。
ただしこの曲は、いわゆる「かっこいい」というより、
強烈にショッキングな音楽です。
副題は「ファシズムと戦争の犠牲者の想い出に」。
とくに第2楽章では、悲鳴のような叫びが、容赦なく叩きつけられます。
はじめて聴く方は、音楽の常識を根底から揺さぶられると思います!
また、この曲には、ショスタコーヴィチ自身の名前を表す
4つの音型が繰り返し登場します。

それはまるで、自らの存在を刻みつけるような、
痛ましいほどの執念を感じさせます。
覚悟は要りますが、ぜひ一度、体験してほしい作品です。
ぜひご自身の耳で聴いてみてください!
まとめ|弦楽合奏は、こんなにもかっこいい!
- バルトーク/弦楽のためのディヴェルティメント
東欧の民族音楽が生んだ、野性味あふれるかっこよさ - グリーグ/ホルベアの時代から
端正で爽やか、美しさもある北欧のかっこよさ - チャイコフスキー/弦楽セレナーデ
豪華絢爛でありながら透明感のある王道のかっこよさ - エルガー/序奏とアレグロ
知的で立体的、ウェールズの波のようなかっこよさ - 芥川也寸志/トリプティーク
鋭いリズムと切れ味で攻める日本のかっこよさ
ぜひ実際に音を聴いて、皆さんの「かっこいい弦楽合奏」を見つけてみてください。
録音だけでなく、ライブ演奏の機会があれば、ぜひ足を運んでみることをおすすめします。
きっと、弦楽合奏の世界が、今までより面白く聴こえてくるはずです!
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